JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第17回国土技術開発賞

優秀賞(国土交通大臣表彰)

プレキャスト・ブロック化したハイブリッド防潮堤(第17回国土技術開発賞 優秀賞)

応募技術名称プレキャスト・ブロック化したハイブリッド防潮堤
副題堤体のブロック化で“超”急速施工、現地生産資材のミニマム化
応募者名JFEエンジニアリング(株)
技術開発者JFEエンジニアリング(株) 田中祐人・奈良 正

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

 東日本大震災による被災地復興は、2015 年度末までの5年間で集中的に実施することが基本方針である。しかし、現地では多数の復興工事が並行して行われているため、生コンや型枠などの現地生産資材や人手が不足しており、現場工期の長期化や工事の着手困難などの課題が生じている。

 このような状況において、現地では防潮堤に対して@現場工程の短縮・現場作業員の削減、A現地生産 資材の需給動向による影響の低減、などのニーズが生じている。これらのニーズに応える解決策として、 現場作業や現地生産資材のミニマム化が可能な「ハイブリッド防潮堤」を開発した(図−1参照)。

2.技術の内容

 工場製作したプレキャスト・ブロック(横矢板)を輸送(図−3、4参照)し、現場の基礎杭(親杭)に差込むだけで完成する(図−2参照)、親杭横矢板方式の防潮堤を開発した。これらにより“超”急速施工が可能となり、生コンなどの現地生産資材の需給動向による影響を低減できる。 この防潮堤は海側と陸側の基礎杭で支持され、津波荷重を受ける防波版ブロック、杭に荷重伝達する底版ブロックから構成される(図−1参照)。これらのブロックは、芯材となる鋼部材をコンクリートで被覆一体化した、ハイブリッド構造(図−4参照)である。

 防潮堤の防波版基部には、津波荷重により大きな曲げモーメントが作用する。この曲げモーメントに基礎杭だけで耐えるには、極厚の基礎杭が必要になる。極厚の基礎杭は高額で、かつ入手までの時間も長くなる。そこで、底版ブロックを基礎杭に差込むだけで、底版ブロックから飛び出した内側鋼管(図−3の左段参照)と基礎杭が容易に二重鋼管(図−5の左段参照)となり、必要な板厚を確保できるように工夫している。

3.技術の効果

 既存技術の「現場打ちコンクリート防潮堤」と新技術「ハイブリッド防潮堤」を、山田漁港クラスの防潮堤を対象に現地での工期や作業量、ならびに現地生産資材量で効果を比較する。
1)現地工期や作業量
 各工種の標準歩掛かりに、生コン不足により打設までの手待ちを加えて工期や作業量を概算する。その結果、既存技術に比べて現地工期を60%、工数を80% 削減できる。
2)現地生産資材量
 現地生産資材の代表として生コンクリートと型枠の数量を比較したところ、既存技術に比べて生コン量を80% 削減、型枠面積を95% 削減できる。

4.技術の適用範囲

・基礎杭が打設できる地盤
・基礎杭の延長方向ピッチが最大10m 程度、壁高が最大12m 程度。

5.技術の適用実績

 山田漁港海岸災害復旧(23 災県第680 号防潮堤その1)工事、平成25 年3月〜平成26 年1月(平成27 年8月まで工期延伸)   他8件

写真・図・表

    図1 ハイブリッド防潮堤の概要           図2 現場施工フロー

   図3 プレキャスト・ブロックの製作・輸送フロー    図4 山田漁港(その1)工事向け防波版(上段)

        ・底版ブロック(下段)の配筋、輸送状況