JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第17回国土技術開発賞

優秀賞(国土交通大臣表彰)

セグメントを用いたシールドトンネルの地中拡幅工法 (第17回国土技術開発賞 優秀賞)

応募技術名称セグメントを用いたシールドトンネルの地中拡幅工法
副題WJセグメント工法
応募者名首都高速道路(株)
(株)安藤・間
技術開発者首都高速道路(株) 永井政伸
(株)安藤・間 井上隆広・小倉靖之

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

 大都市圏における高速道路の建設は、環境対策からトンネル構造を適用する事例が増え、断面変化を伴うジャンクションなどとの分岐合流部の施工法が技術面の最大の課題となっていた。従来は開削工法が採用されていたが、周辺環境や道路交通への影響が大きく、解決策として地中拡幅工法の開発と実用化が求められていた。

 首都高速中央環状品川線と大橋ジャンクションとの分岐合流部を建設する大橋連結路工事は、地上が日交通量4万台の幹線道路であり、沿道にはビルが林立し、陸橋や河川などの重要構造物下での施工であった。そのため、開削工法による分岐合流部の施工は困難であり、地中拡幅工法として、2本のシールドトンネル間をアーチ形状のセグメント(以下、拡幅セグメントと称す)で接合する新しい工法(WJ セグメント工法:Wing Joint セグメント工法)を開発し、実用化した(図−1、図−2)。

2.技術の内容

 2本のシールドトンネルを地中で拡幅して1本の大断面トンネルを構築する技術である。地上の交通規制を行わないため、道路交通へ全く影響を与えずに分岐合流部を構築することができる。覆工構造に、耐力および靱性の高い鋼製セグメントを採用し、大深度・大断面トンネルの覆工の軽量化と止水性・耐久性の向上を実現できる。さらに、工場製品のセグメントを現地で組み立てることで拡幅部の覆工を完成でき工程が大幅に短縮できる。また、シールドトンネル施工時に、あらかじめ拡幅セグメントをボルト接合できる特殊形状の接続ピースを設けておき、拡幅セグメントを組み立てた後にトンネル間の仮設セグメントを撤去する施工手順とすることで、地山の開放を最小限に抑え、地盤沈下等の周辺環境への影響を抑制することができる (写真−1)。

3.技術の効果

 以下に、中央環状品川線大橋連結路工事の施工実績にもとづいて、本技術の効果を示す。
@ 地中拡幅による大深度・大断面トンネルの実現:

  • 最大土被り37m、最大水圧0.45MPaの大深度において、延長約200mにわたり、幅22.3m、高さ14mの漏水のない上下2層構造の大断面トンネルを地中で構築した。
  • 設計と現場計測結果との対比により設計の妥当性を検証し、本工法の設計手法を確立した
A 工程短縮:シールドトンネル完成後からの地中拡幅工事 に要した期間は1年10ヶ月であった。
B 周辺環境への影響抑制:上記大断面トンネルの施工における最大地表面沈下量を8mmに抑えることができた。

4.技術の適用範囲

 適用範囲の制限はない。ただし、1)拡幅区間の全長において一定の用地幅が必要なこと 2)シールド施工時期が遅れる場合は地中拡幅全体工程が遅延すること 3)未固結の帯水地盤では補助工法が必要なこと 4)シールドと拡幅の両工事の作業空間や施工動線の調整が必要なこと 5)シールド施工時において特殊形状のセグメントに対応したエレクター等が必要なこと、などに留意が必要である。

5.技術の適用実績

 中央環状品川線大橋連結路工事、平成19 年5月〜平成26 年11 月

写真・図・表


     図−1 中央環状品川線大橋連結路工事の概要        図−2 WJ(Wing Joint)セグメント工法

               写真−1 WJセグメント工法の施工手順

 写真−2 完成写真(分岐部:大橋方向を望む)    写真−3 完成写真(合流部:大井方向を望む)