JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第17回国土技術開発賞

最優秀賞(国土交通大臣表彰)

過給式流動燃焼システム (第17回国土技術開発賞 最優秀賞)

応募技術名称過給式流動燃焼システム
副題ターボチャージャーを用いた省エネ・低環境負荷型下水汚泥焼却炉
応募者名国立研究開発法人土木研究所
技術開発者国立研究開発法人土木研究所 岡本誠一郎
(公財)日本下水道新技術機構 落 修一
国立研究開発法人産業技術総合研究所 鈴木善三
共同開発者国立研究開発法人産業技術総合研究所
月島機械(株)
三機工業(株)
東京都下水道局

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

 下水道は、都市の健全な発達、公衆衛生の向上、公共用水域の水質の保全に資することを目的に整備さ れてきた。下水道の普及とともに、下水処理過程で発生する下水汚泥の量は増加している。発生した汚泥 の約7割は減量化のため焼却されているのが現状であり、そのために大量の燃料や電力が消費されている。
国内における下水汚泥焼却炉の多くは、気泡式流動床炉であり、この排ガスは、高温のエネルギーを有し ているが、燃焼用空気の予熱への利用に止まっており、エネルギー的な無駄が多かった。また、下水汚泥 の窒素含有量は極めて高く、気泡式流動床炉では焼却時に温室効果の極めて高い一酸化二窒素(温室効果 は二酸化炭素の310 倍)が排出されるため、その削減を図ることが大きな課題となっていた。そのような 中、地球温暖化対策の機運の高まりなどを受け、汚泥焼却炉の抜本的な技術革新を目指し、前述の課題を 解決できる過給機(ターボチャージャー)を用いた新たな下水汚泥焼却システムを考案し、開発した。

2.技術の内容

 開発された過給式流動燃焼システム(以下、本システムと呼ぶ)は、流動床炉に過給機を組合せて構成される(図−1参照)。本システムでは、脱水汚泥(下水汚泥を脱水したもの)を約120 〜 140KPaG の圧力下で燃焼させることにより燃焼効率を高めている。燃焼に伴って発生した排ガスは空気予熱器、集塵機を経て過給機に導入され、その圧力で過給機タービンが駆動し、過給機コンプレッサに吸引された空気を圧縮し、圧縮空気が製造される(図−2、3参照)。この圧縮空気が空気予熱器で予熱された後、焼却炉に燃焼空気として供給される。燃料となる汚泥が連続供給されていれば送気および排気動力無しでシステムが自立する。

3.技術の効果

 本システムの効果は、加圧により燃焼効率を高めるとともに、従来システム(気泡式流動床炉)に必要であった流動ブロワと誘引ファンの運転が不要となるため、その運転費を削減することができ、消費電力を40% 以上削減することができる。また、加圧燃焼であるため焼却炉を同処理量の従来焼却炉に比べて小さくできることから、放熱量が少なくなり、補助燃料使用量を10% 以上削減するとともに、設備の設置スペースを縮小し建設費を10% 程度削減することができる。さらに、加圧燃焼により焼却炉の下部で高温領域が生成され、一酸化二窒素の分解が促進されるため、従来システムと比較しても一酸化二窒素の排出量を約50% 削減することができるものである。

4.技術の適用範囲

・下水汚泥の焼却に適用可能である。
・ 国内の下水汚泥焼却炉は、平成23 年度末時点で281 基存在する。今後、老朽化の進んだ設備の更新・改築が見込まれることから、適用範囲は広いものと考えられる。

5.技術の適用実績

 相模川流域下水道右岸処理場焼却炉改築工事(機械・電気)(発注者:神奈川県流域下水道整備事務所)、平成26 年3 月竣工、平成26 年8 月29 日までの試運転を経て引き渡し 他6件

写真・図・表

  • 図−1 従来システムと本システムの違い(流動床炉が小さくなり、流動ブロワや誘引ファン
    の運転が不要になる)

   図−2 過給機のカットモデルと空気の流れ           図−3 流動床炉本体と過給機の空気の流れ