JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第7回国土技術開発賞

入賞(選考委員会委員長表彰)

水平U−チューブ(HUT)システムによるトンネル坑口凍結防止システム (第7回国土技術開発賞 入賞)

応募技術名称水平Uーチューブ(HUT)システムによるトンネル坑口凍結防止システム
副題トンネル内浅層地中熱を利用したトンネル坑口ロードヒーティングシステム
応募者名国立大学法人 福井大学
技術開発者国立大学法人 福井大学 福原輝幸

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

 開発者は、1995年より熱交換掘削杭を用いた地中熱採集システムの開発とロードヒーティングの研究を行ってきた。その後、1998年に兵庫県村岡町の道の駅「ハチ北」に、貯水槽蓄熱システムを用いたチェーン着脱場の無散水融雪システムを国土交通省豊岡国道工事事務所と共同で構築し、2002年の土木学会環境賞を受賞した。

 この間、開発者は冬期道路において多発するトンネル坑口での事故を防止するために、新たな路面温度制御の技術開発について構想を練っていた。ただし、技術開発の命題として性能は勿論のこと、初期費用の削減と道路沿道の環境保全があった。そこで、開発者はサーマルマップを行い、トンネル内部の路面温度や気温は坑口よりも高いこと(布団効果)を確認して、布団効果を活用した水平チューブ(HUT)システムによるトンネル坑口凍結防止システムを考案した。 

2.技術の内容

 当該技術はトンネルの構造から生じるトンネル内保温効果(布団効果)を利用した坑口路面凍結防止システムである。システムは、水平U-チューブ(HUT)で地中熱を採集する採熱部と、地中熱を放出するための放熱パイプを有する坑口無散水舗装からなる。トンネル中央部のインバート上に敷設されたHUTが熱交換器の役割を果たす。HUTと無散水舗装中の放熱間はパイプで接続され(閉回路となり)、熱輸送流体(水)がHUTで採集された熱を放熱管に供給し、坑口舗装を暖める。舗装内を循環した後に冷えた流体は、再びHUTを循環する間にトンネル内地中熱を収集して昇温し、ロードヒーティングの熱源となる。 

3.技術の効果

(1)コスト縮減≪従来の地中熱を利用したロードヒーティングとのコスト比較≫

【 施工に係わる全費用(採熱施工費用+舗装費用)での比較 】

 ・ 従来システムによるコスト  単位凍結防止面積(m2)あたり 12〜13万円

 ・ 本システムによるコスト   単位凍結防止面積(m2)あたり 10万円/m2以下 ⇒約25%削減

(2)環境対策に貢献

 電熱式ロードヒーティングに比べて二酸化炭素の排出(年間約11,400kg)削減

(3)沿道環境への負荷の低減

 凍結防止剤散布が不要

 

4.技術の適用範囲等

・トンネル坑口でのロードヒーティング
・気温約-7度以上までは凍結防止が可能
・トンネル長として1km以上であれば、安定的に性能を発揮

5.技術の適用実績

春日和田山道路歌道谷トンネル融雪設備、平成15年10月〜平成17年3月