JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第16回国土技術開発賞

地域貢献技術賞(国土交通大臣表彰)

スチールグリットによる循環式ブラスト工法 (第16回国土技術開発賞 地域貢献技術賞)

応募技術名称スチールグリットによる循環式ブラスト工法
副題循環式エコクリーンブラスト工法
応募者名山田塗装(株)
技術開発者〔山田塗装(株)〕山田 博文

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

橋梁の塗装塗替え工事において旧塗膜を除去するブラスト技術が、塗膜の耐久性を増大する手段としての有効性が認められ、その規格は、1種ケレンとして鋼道路橋塗装・防食便覧に記載され、近年その需要が多くなっています。

ブラスト(1種ケレン)は、通常 非金属系研削材(ガーネット、高炉スラグ等)を使用してエアーブラスト工法で施工されていました。機械設備も小型で操作も簡単です。また 非金属系研削材は、安価で取り扱いも容易です。しかし 非金属系研削材は、一度使用すると粉砕してしまうのですべて産業廃棄物になってしまいます。通常1,000u当り40tの研削材を使用しますが、実際に除去した塗料カスは、0.8tしか発生しません。残りは全て一度使用した研削材です。

特にPCBや鉛を含有する塗膜は、特別管理産業廃棄物になるのでその処分費は、莫大なものになります。

このことから、従来の産業廃棄物を多く発生する工法を改善し建設副産物の抑制と再資源化率の向上を目指し、環境に優しい施工方法について当社で取り組みを行いました。

2.技術の内容

循環式エコクリーンブラスト工法は、金属系研削材を使用して噴射します。金属系研削材は、ねばり強く破砕されにくいので何度(600回)も繰り返し使用できます。またブラスト設備は、セパレータ(研削材分離装置)、ダスト回収装置、ルーツブロワーを組み合わせて研削材を循環再利用できる設備にしました。

塗装面に噴射し床面に落ちた研削材と塗料カスを回収ホースにて吸引しセパレータを通して研削材と塗料カスを分離します。研削材は、ホッパータンクに集積された後、加圧タンクに送られ再使用します。塗料カスは、ダスト回収装置に集めて産業廃棄物として処分します。

3.技術の効果

循環式エコクリーンブラスト工法は、研削材を循環再利用するので発生する産業廃棄物は、塗料カスだけとなり、従来工法の1/50程度になり大幅に削減されます。その為 産業廃棄物の処分費が大きく減るので全体の施工コストが、安くなります。また金属系研削材を使用している為 研削材が粉砕しないので粉塵の発生量が非常に少なく作業環境が改善されました。

研削材を循環再利用する為、搬入する研削材が減り、搬出する産業廃棄物量も減ります。プラント設備の機械は、従来工法の機械より大きくなりますが、全体の資材運搬車両は、大きく削減されます。

4.技術の適用範囲

  • 鋼構造物の塗装塗り替えにおける素地調整(1種ケレン)を行う作業
  • コンクリート巻き立て工事における表面処理

5.技術の適用実績

平成23年度 23号北頭高架橋橋梁塗装工事、平成24年 3月〜平成25年 3月   他 34件

6.地域への貢献

循環式エコクリーンブラスト工法の活用により愛知県や三重県内における鋼橋の塗替え時の下地処理で発生する産業廃棄物を大幅に削減しました。従来工法に比べて施工時の粉じんの発生を抑制し、資材運搬や産業廃棄物の搬出車両も大幅に減らすなど工事における近隣住民への迷惑度を最小限にすることができました。また 循環式エコクリーンブラスト工法の活用により温室効果ガスの排出量を減らし愛知県や三重県のクレジットを購入することにより地域に密着したカーボンオフセットを行っています。

写真・図・表

図-1  循環式エコクリーンブラストシステム

  • 写真-1 プラント設備
  • 写真-2 投射状況
      • 写真-3  国道23号 北頭高架橋 (名古屋市)
      • 写真-4  地球温暖化対策プロジェクトの支援