受賞技術概要
-
-
第18回国土技術開発賞
-
- 第18回国土技術開発賞
優秀賞(国土交通大臣表彰)
都市型小変位免震構法(第18回国土技術開発賞 優秀賞)
応募技術名称 | 都市型小変位免震構法 |
副題 | パッシブ切替型オイルダンパーの開発と適用 |
応募者名 | 大成建設(株) |
技術開発者 | 大成建設(株) 欄木龍大,木村雄一 |
共同開発者 | カヤバシステムマシナリー(株) |
技術の概要
1.技術開発の背景及び契機
東日本大震災以降,地震後の建物機能維持・事業継続性の観点から免震建物のニーズが益々高まっている。しかし,都市部の密集市街地においては,狭小な敷地環境の制約から,建物周囲に600mm〜700mm程度のクリアランスを必要とする免震構法の採用が困難な場合が多く,免震層変位の抑制技術の開発が強く望まれていた。従来の免震構法でも,免震層のダンパー量を増やして減衰力を大きくすることで,免震層変位を抑制する事は原理的には可能であるが,頻度の高い中小地震に対しては減衰力が過剰となって免震性能が低下するという問題があり,都市部の密集市街地では免震建物の採用が進まない状況にあった。
2.技術の内容
都市型小変位免震構法では,設定した変位を超えると小さな減衰係数から大きな減衰係数に性能が切り替わる「パッシブ切替型オイルダンパー(認定番号MVBR-0498, MVBR-0565)」を開発して課題を解決した。すなわち,発生頻度の高い中小地震に対しては,小さな減衰係数を持つことで十分な免震性能を発揮して事業継続性に寄与し,それを超える大地震に対しては大きな減衰係数に切り替わることで免震層変位を抑制して擁壁との衝突を防ぎ建物の安全性を確保する。パッシブ切替型オイルダンパーは,電気などのエネルギー供給を必要としない簡便な機構のため,地震時にも確実に作動する。
3.技術の適用範囲
・ 新築の免震建物,既存建物の免震改修工事など,全ての免震建物に適用可能(戸建住宅を除く)
4.技術の効果
中小地震に対する高い免震性能を保ちつつ,大地震時は大きな減衰係数に切り替わることで,従来よりも小さい免震クリアランスでも衝突を回避することができる。これにより,今まで免震構造を採用したいが見送るような都市部の密集市街地でも,狭小な敷地を有効に利用しながら事業継続性を高めることができるようになった。
5.技術の社会的意義及び発展性
都市部密集市街地における免震建物の普及に大きく寄与し,都市の防災安全性の向上効果も期待される。また,パッシブ切替型オイルダンパーは,従来の設計の想定を超える地震動に対する安全性向上技術として一般の新築および既存の免震建物においても展開可能な,発展性の高い技術である。
6.技術の適用実績
新宿区役所本庁舎免震改修工事,平成26年3月25日〜平成27年11月20日 他2件