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技術資料・ソフトウェア / JICEの部屋(コラム)

韓国のPFI法

掲載日時:2010/12/27

はじめに

 我が国においては、高齢化の進む社会資本ストックの維持管理・更新を効率的に進めつつ、国際競争力の強化や良質な公共サービスの提供を図るため、必要なインフラの戦略的整備を進めることが求められている。
 しかしながら、財政の悪化や、高齢化の進展に伴い増大する社会保障予算を背景に公共事業予算の抑制傾向が続いており、成長著しい近隣諸国と比較してもインフラの相対的整備水準が低下している状況にある。
 一方で、我が国の民間部門は莫大な過剰貯蓄を有しており、民間資金を成長分野の投資に効果的に活用することが経済成長の鍵であり、民間資金を活用したインフラ整備であるPFI、PPPは有効な手段の一つと考えられる。

 お隣の韓国は競争力の向上が著しく、今やいくつかの分野では我が国を凌駕する勢いであり、高速道路、高速鉄道、拠点港湾・空港といった競争力強化のための基盤整備を積極的に進めている。高速道路整備を中心にPFI事業が大きな役割を果たしており、社会基盤投資に占める民間投資の割合は17%(2008年度)に上っている。背景にはアジア通貨危機によりIMF管理下に置かれたこと等を契機に社会基盤投資への民間資金導入に取り組み、法令を含む施策面の充実が進められてきたことも重要な要因と考えられる。

 そこで、韓国のPFI法である「社会基盤施設に対する民間投資法」(以下、「韓国PFI法」という。)について紹介する。なお、韓国ではPPI(Private Participation in Infrastructure)と称しているが、ここでは一般的なPFIを使用した。

韓国PFI法の構成

 韓国PFI法の構成は右図の通りである。

 PFI事業の実施に係る規定だけでなく、事業施行者に対する保証制度(第2章第4節)や、インフラファンド(同第5節)に係る規定をも包含する法律である。制定以来、多くの改正や条文の追加が行われており、不断に制度の改善に取り組まれてきたことがわかる。また、各条文は配慮規定等は少なく、ほとんどの条文が具体的な規定となっている

韓国PFI法(日本語訳)(約427kb)

※参考訳であり、訳文及び用語について法律的な妥当性等の確認を行ったものではないことに留意願います。

韓国におけるPFI事業の法手続きの流れ

 韓国のPFI事業は、事業の発案方式の違いにより、政府告示事業と民間提案事業の2種類がある。それぞれの手続きの流れは、<図1>及び<図2>の通りである。

<民間投資事業に係る法手続きの流れ>

 図1:政府告示事業(約57kb)
 図2:民間提案事(約53kb)

韓国PFI法の特徴的な規定

 以下、韓国PFI法について、我が国のPFI法に規定のない事項を中心に特徴的といえる規定をいくつか紹介する。

関係法律との関係(第3条)

 「この法律は、民間投資事業に関し、関係法律の規定に優先して適用する。」と規定しており、次に示す第17条と併せ、韓国がPFIの推進に国を挙げて取り組んでいることを示す象徴的な条文である。

他の法律による許認可等の擬制(第17条)

 主務官庁が民間投資事業の実施計画を告示した場合には、当該民間投資事業と関連した関係法律が定めている許認可等と、関係法律の規定により許認可等を受けたとみなされる他の法律の許認可等を受けたとみなし、関係法律及び他の法律による告示または公告があったものとみなす(ただし、関係行政機関の長との事前協議は必要。)。

土地の収用・使用(第20条)

 事業施行者は、土地・物件または権利を収用または・使用することができ(第1項)、実施計画の告示があった場合には、事業認定及び事業認定の告示があったこととみなす(第2項)規定である。また、土地買収業務等は主務官庁または関係地方自治体の長に委託することができる(第3項)ことも規定されている。

 民間の事業施行者に収用権を授与していることは規定としては特徴的であるが、実際は、第3項を適用し、用地買収は官側が受託する場合が多いとのことであり、収用権の授与よりも、韓国では用地買収は計画期間内に完了するのが普通であることがPFIの普及には寄与していると思われる。

社会基盤施設に対する公共投資管理センター(PIMAC)の設置(第23条)

 対象事業の検討、事業妥当性の分析、事業計画の評価等の業務を総合的に遂行するために、韓国開発研究院の付設機関として設置されるものである。

社会基盤施設管理運営権(第26〜28条)

 無償で使用・収益できる期間内で、同施設を維持・管理し施設使用者から使用量を徴収できる社会基盤施設管理運営権(管理運営権)を設定することができる。管理運営権を登録した事業施行者は、当該施設の適切な維持・管理に関し責任を負うとともに、管理運営権はこれを物権とみなし、民法における不動産に関する規定を準用すると規定されている。 大規模な事業の場合、建設段階の資金調達規模、すなわち負債が大きくなることが見込まれるが、管理運営権を物権とみなす規定を置くことで、見合いの資産としての法的位置づけが明確化されている。

産業基盤信用保証基金(第4節)

 金融機関から民間投資事業資金の融資を受けようとする事業施行者等の信用を保証するために設置する基金にかかる規定であり、基金は、拠出金、(政府及び地方自治体ほか)、保証料収入、基金の運用収益、借入金を財源として造成すると規定されている。

社会基盤施設投融資会社(第5節)

 社会基盤施設投融資会社」とは、社会基盤施設事業に資産を投資しその収益を株主に配当することを目的とする会社であり、いわゆるインフラファンドに関する規定である。韓国における投資会社に関する法律としては、「資本市場と金融投資業に関する法律」があり、社会基盤施設投融資会社も基本的には当該法律の適用を受けるが、本節において、兼業が制限(第42条)され、資産運用の範囲は社会基盤施設事業への投資とそれ関連する業務に限定(第43条)される一方で、同一種目の証券への投資比率に関する規制が適用除外とされる(第44条)など、社会基盤施設事業に投資する会社の特性を踏まえた規定が設けられている。

おわりに

 韓国では多くの社会基盤整備がPFIにより行われてきた。一方、我が国のPFIはいわゆるハコモノを対象とした比較的小規模なものが多く、規模の大きい社会基盤の整備に適用した事例は極めて少ない。韓国の社会基盤分野に係るPFIの適用事例が最も多い有料道路事業に関しては、韓国では現在も韓国道路公社が実施しているのに対し、我が国では、道路関係四公団の民営化により事業制度の再構築が図られ、市場から長期・低利の資金調達が行われていることや、前述した用地取得環境の違いなど、事業を取り巻く環境が異なっており必ずしも同列に論じることはできないが、管理運営権の設定やインフラファンドの育成など、事業施行者の立場に立った施策の充実が韓国のPFIの発展に寄与していることは間違いなく、我が国の今後のPFIに関する制度のあり方を議論するに当たり参考とすべき点も多いと考える。

 なお、JICEでは韓国のPFI事業の現状について平成22年9月に現地調査を行った。その概要をJICE REPORT18号で紹介しているので、ご覧頂けると幸いである。