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技術資料・ソフトウェア / JICEの部屋(コラム)

地域活性化のヒントから 〜他人事ではなくす〜

掲載日時:2010/07/08

はじめに

 前職で地域活性化支援の国の総合窓口において日本各地における地域活性化の取り組みの支援を行うかたわら、地域活性化に直接携わり活躍する方々(地域活性化の専門家)のお話を聞く機会等に恵まれました。 地域のおかれた条件や課題に応じて、具体的な取り組みの内容は当然個々個別に様々なものとなりますが、それぞれの取り組みの中に見出されたいくつの共通点や自分なりになるほどと思ったポイント、いわば地域活性化のヒントを中心にご紹介したいと思います。

地域活性化のヒント

地元の人には見えない地域資源を発掘

 地域活性化の専門家が地域を訪れると、地元の人からよく「何でこんなまちに来たの」とか「ここには何にもない」という発言を耳にするそうです。地方になればなるほど、東京などの大都市に対する劣等感が強く、それと比較して自分のまちは全然駄目だということになり、元気も出なくなりがちのようです。
 しかし、例えば、徳島県上勝町では、都会から観光で訪れた若い女性が、料理に添えられた地元ではごくフツーの真っ赤な紅葉の葉っぱを大切そうにハンカチで包んでお土産に持ち帰るのを見たことをきっかけに、いわゆる「葉っぱビジネス」を立ち上げて成功したという事例もあります。
 町の人にとって紅葉の葉っぱは、その辺にいくらでもあふれているし、むしろ処理に手間のかかる厄介者であって、まさかそれが売り物になって商売が成立する宝物だとは思いもよらなかったのでしょう。何でも東京に追いつこうとするばかりでは、むしろ中途半端に画一化され、地域の魅力を失うことになりかねません。灯台下暗しではありませんが、まずは、できれば第三者の視点を活用して、自分の地域をもう一度見直して、その魅力を再発見し、発掘された地域資源をさらに高めることによって、他の地域との差別化を図ることに可能性が見出されます。

高付加価値化とリピーターの確保

 地域の特産物を売るというのはもちろん地域資源の活用ですが、せっかくいい農産物等を生産しても、単純にそれを出荷するだけでは、輸入品も含めた一律の価格競争に巻き込まれ、苦労に見合う利益があがらないということになります。しかし、例えば、消費者に価値を認めてもらえるような高品質の自慢の農産物等であれば、ひと工夫加えた加工品にするなど、消費者のニーズに応じた付加価値を上乗せした商品化を行えば、利益幅の拡大が可能となり、これが好循環すれば、ブランド品としての商品の差別化・確立につながることも期待されます。
 ちなみに特産物の加工品では高知県馬路村のゆずポン酢しょうゆが大変有名ですが、その一方で、高知県全体で見れば、加工まで手を出そうという生産者が少なく、農業物の出荷額に比した加工品の出荷額の割合が実は全国最下位に近いという事実があります。
 また、淡路島ではオリーブという地域資源のブランドイメージを生かしつつ、オリーブを原材料に食品よりもリピーターのつきやすい化粧品に加工してネットで通販し、健康志向の女性の固定客をつかんで成功している農園があります。消費者のニーズに対応して、リピーターがつきやすい商品作りを行えば、継続的な利益の確保が期待できます。

チャンスを逃さない

 佐賀県武雄市では、地域資源として、なんとおばあちゃんに白羽の矢を立てました。適当な地域資源は見つからないが、高齢化の進展により高齢者はたくさんいるということを逆手に取った形です。
 それも島田洋七原作のテレビドラマ「佐賀のがばいばあちゃん」が高視聴率で話題になっている最中に、平均年齢75歳の史上最年長アイドルと銘打ったダンスチームGABBAを結成し、各地でコンサートを行って、頑張っているおばあちゃんの姿を見せることによって、高齢者の機運を高め、地域を元気にすることに成功しています。
 地域活性化のしかけには、このようにタイミングを逸せず、チャンスにしっかり便乗するフットワークの良さも必要です。ヒット映画やNHKの大河ドラマの舞台になるなど、その地域が一時的に世間の注目を浴びるチャンスが巡ってきた時に、より多くの観光客を呼び込んだり、呼び込んだ観光客が地域により多くのお金を落とすよう、商品プロデュースを工夫するなど、千載一遇のチャンスを効果的に生かすとともに、一過性に終わらないよう継続させる工夫が求められます。

リーダーシップと全員一丸

 武雄市では、東京の有名ホテルのカフェで高価なレモングラスのハーブティが女性に大人気であることに感銘を受けた市長の思いつきで、レモングラスによる地域活性化に市をあげて取り組むことにしました。その結果、今では武雄の特産物として定着し、東京の有名百貨店でレモングラスによる様々な加工品が特売されるほどになっています。
 このアイディアは大成功の一例ですが、アイディアの善し悪しは別としても、誰かがリーダーシップを発揮し、多くの関係者を巻き込んで、ひとつの目標の実現に向って全員が一丸となって突き進んでいくことは地域活性化の理想的な取り組み姿勢です。(余談ですが、武雄市長はその他にも多くのアイディアを実行されていますが、そのネタ元の一つは月に50冊も講読している雑誌だそうです)

 その意味で、地域活性化に果たす行政の役割は大きく、特に首長の影響力と権限と責任は大きいと言えます。また、地域活性化は、行政の担当者にやる気があるかないかによって大きく左右される、人口5〜10万人の町なら本気で働く職員が1人いれば劇的に変わるといった意見もあります。

ひょっとしたらできるかもしれない

 また、どんなに難しい目標であっても、“ひょっとしたらできるかもしれない“と実現を信じて前向きな気持ちを持ち続け努力することが重要です。全く別の分野で挑戦的な取り組みをされている方々から、マイクロソフト社のビル・ゲイツ会長本人にイベントに出席してもらうという一見不可能とも思える目標を立て、さまざまな手を尽くした結果、本人には手は届かなかったが、同社の幹部に出席してもらった、という非常によく似たエピソードを伺ったことがあります。できない言い訳ばかり並べる前に、どうしたらできるかを考え行動する思考回路と行動力の大切さが示されています。

自立なしに継続なし

 「ボーナスが出る村」として有名な“やねだん”(鹿児島県鹿屋市串良町の柳谷集落)では、公民館の館長がリーダーシップを発揮し、「補助金に頼らない地域おこしを住民総参加で実践する」というポリシーのもと、何かやるにしても行政からのトップダウンで言われるがままにやっているだけの地域に活力を呼び起こしたいと奮闘しました。その結果、思考停止状態にあった住民に、自分で考え、自分達の地域を補助金に頼らず自分達で作るという意識を持たせることに成功しました。
 地域活性化を会社経営に例えて自立なしには継続なしと指摘する専門家もいます。
 また、ある専門家は、地域の関係者が相互に協力し支え合う自立した地域づくりを目指し、現地入りする際に、必ず地元金融機関と意見交換する場をセットするそうです。そして、地域経済が活性化すれば金融機関も含む地域全体が恩恵を受け得ることから、果実を待つだけではなく育てる段階から積極的に関与・協力すべき責任と義務があることを説き、地元金融機関に対して初動期の資金調達に対する積極的な協力を働きかけています。

規制ではなく人が障害

 ある時、現場で地域活性化に取り組む地域活性化の専門家に、国のこんな規制や制度が障害になっているというようなことがあれば教えて欲しいとお願いしたことがありました。その結果、規制や制度が障害というより、結局のところ人が障害になっているというお話しを多くお伺いしました(もちろん、現場で取り組む方々にとっては、規制や制度を前提に活動せざるを得ないために、疑念を持つ発想をしにくいとは思います)。
 地域を活性化するためには、制度や仕組みの問題以前に、まず第一に人がいなければ始まりませんが、リーダー一人だけではどうすることもできません。リーダー達は、多くの地域の関係者が同じ方向を向いて進んで行けるよう、話し合い、協力を得ながら取り組みを進めていくことになります。しかし、何も変わらないままでは地域が活性化するはずがなく、取り組みには、当然のことながら必ず変化を伴うことになります。
 従って、地域の関係者には少なくとも何らかの変化を受け入れてもらう必要がありますが、地域活性化が求められる地方ほど高齢化が進んでおり、一般的に高齢者になればなるほど変化に対する抵抗感が強くなるのも事実です。特に今地域の有力者となっている方々は、親の世代が築いた高度成長時代の恩恵を享受してきた経験から、親から受け継いだやり方から脱却できないなど、変化に対する抵抗が特に強い傾向があるのだそうです。そして、時には、地域活性化の取り組みに参加しないだけではなく、足を引っ張る存在にもなります。

人はどうしたら動くか

感動させる

 ではどうしたら人を動かすことができるのでしょう。“やねだん”でも当初、地域の有力者が反対者となり障害になったそうです。そうなると、その人に気を使って活動に参加しない人がどんどん増えてしまうという悪循環を生んでしまいます。そこで、地域活性化のリーダーである公民館長は、都会に出た子供達の書いた親への手紙を父の日などに集落の広報用の有線放送を使って読み上げるという地域おこしのアイディアを活用して、反対者の娘からの手紙を放送することによって、その反対者を感動させ、動かすことに成功したそうです。このリーダーによれば、人を動かすコツは感動させることだそうです。

他人事ではなくす

 このエピソードにも共通していますが、人が動くためのキーワードは、「他人事(ひとごと)ではない」ことではないかと思っています。自分の経験からも「他人事ではない」と認識すると、動かざるを得なくなるという心理的効果があると思うからです。このエピソードで、反対者を感動させることができたのは、反対者にとって地域おこしの取り組みが、他人事ではなくなったからと理解できます。本を読んで泣けるのも、読み手が自分の原体験と重ね合わせることによって、物語が他人事ではなくなっているケースが多いのではないかと思います。

役に立ちたいが責任は持ちたくない

 そもそも人は最初から地域活性化に協力したくないと思っているわけではありません。最新の内閣府の世論調査によれば、65%の人が社会のために役に立ちたいと思っているそうです。役に立ちたいという気持ちは、むしろ多くの人が持っています。
 ただ、何か社会のために役に立ちたいと思って動き始めても、責任は感じたくないと思う部分が必ずありますので、負担感が障害となって、活動が停止してしまうことにならないよう、まずはこれだったらできるという範囲で動いてもらうことが肝心です。

企業も役に立ちたい

 また、個人だけでなく、企業も、一住民として、また、企業評価の観点から、地域の役に立ちたい、立たなければいけないと思っています。三木谷社長によれば、楽天の合言葉は、「日本を元気にしたい」だそうです。BRUTUS(マガジンハウス)の編集長も、反響の大きかった「愛する地方都市」特集を再度やりたいと考えているそうです。企業は資金や人材という資源を有していますので、いわゆるCSR(Corporate Social Responsibility)活動を地域活性化にうまく活用できると効果的です。そのためにも、役に立ちたい企業と住民とのマッチングやご近所の底力的活動ノウハウを有する住民とノウハウを入手したい住民との情報交換などが幅広く恒常的にできる場があれば有効なツールになりそうです。

役割を与えられ評価されると元気が出る

 最初に人を動かすには大変な努力・労力を要しますが、一旦役割を与えられて動き出し、その成果が正しく評価されると元気になり、笑顔になり、がんばれるのだそうです。そうなれば、今度はより高い評価を得ようと、自発的に改善を加えて動くことも期待されます。
農産物直売所は、農家のご婦人達が農協に出せない農産物を自主的に販売することから始まりましたが、全てを農協に依存していた農家のご婦人達が、自分達の商品に自分達で値段をつけて販売し、その売り上げが自分の口座に振り込まれることでモチベーションが上がり、レジで聞いた消費者のニーズを自分達で工夫して商品改善に反映するという取り組みの例があります。
 このような好循環をなるべく多くの人を巻き込んで共有し、地域一丸となって活性化に取り組むことができれば理想的です。

他人事ではない事例

 高齢者向けの教室を開催する際に、「高齢者向け街歩き講座」といった標題で参加者を募集したところ全然集まらなかったので、ひと工夫加えて「あなたのための若返り教室」と名称変更したところ、一気に参加者が集まったそうです。ネーミングを変えるだけで、他人事ではないと意識が変わった面白い事例です。ネーミングも重要だということがわかります。

 またある地域の中心市街地の活性化のため、地域住民の子供の絵を商店街の各店舗に一枚ずつ飾るという取り組みを実施したそうです。すると、このイベントは親にとって否応なしに他人事ではなくなり、子供の絵を見るために商店街に足を運び、ついでに買い物までして帰ることになります。このイベントを開催する負担は大きくはなく、仕掛け人達は、役に立ちたいという思いを具現化しつつも、責任までは感じることなく、これくらいだったらやろうかという、“ごっこやろー”という遊び感覚で、地域活性化に貢献することができたそうです。

 米国や英国には地域住民の自主的な居住地区の価値向上の活動を支援するBID(Business Improvement District)という仕組みがありますが、BIDのエリアとそうではないエリアとではゴミがないことや歩道が花や緑で飾られていることや警備員が巡回していることなど目に見えて違いがあるそうです。居住地区全体の価値が評価され、それが所有不動産の価値評価に跳ね返ってくるということが実感できれば、まちづくりが自然と他人事ではなくなり、価値向上のために協定を結ぼうといった機運につながることが期待されます。 前述の地元金融機関に対する地域活性化の専門家による働きかけも、他人事ではないことを理解してもらい、地域活性化のプレーヤーとして取り込んでいこうとする活動と言えます。

役割分担と他人事

 ところで、物事を効率よく進めていくためには、役割分担が欠かせません。しかし、この役割分担と他人事化との関連性は強く、多くの場合、役割分担が他人事の始まりになってしまうようです。 典型的な例では、道路整備や河川整備などの公共事業は基本的に行政の担うべき役割であり、そう役割分担されているために、国民にとって他人事になりやすいと思われます。公共事業は、国民が生活したり、企業が経済活動を行ったりするための基盤づくりのために行われており、国民にとって大変関係が深いにもかかわらず、多くの国民が他人事と思っている可能性があります。

公共事業の広報はなぜ定着しないのか

 最近、公共事業の広報がなぜ定着しないのかという議論がありました。ビールのCMは新しい味ですと宣伝するだけで、国民は、どんな工夫があって新しい味になったかを追求せずに新製品を気楽に購入するが、公共事業はそのようには受け入れられないというものです。ビールは自分が飲むものですから、他人事にはなりえず、例えば、安くておいしいかどうかをチェックして購入しますが、公共事業は、前述の通り、一般国民にとって他人事ですから、単純に必要性を広報するだけでは、ビールと同じようには受け入れられにくいものと思われます。

 地域活性化のヒントを踏まえると、他人事ではなくすような工夫として、例えば、親が子供に、又は、住民が住民に公共事業の必要性や効果を説明しないといけない場面づくりをする、公共事業の意思決定を下す側に住民に入ってもらう、などがあろうかと思いますが、より責任負担を軽くする観点からは、まずは前者のようなタイプから入るのが現実的かもしれません。

 最近の政府の「新たな公共」に関する動向も、国民が他人事ではなく当事者となってまちづくり等に取り組みやすくしようという趣旨と理解できます。公共事業についても、このような流れの中で、国民との意識共有が図られることが期待されます。

さいごに

 以上の地域活性化のヒント等は、地域活性化の専門家等の方々のお話のエッセンスをまとめたものではありますが、実は、地域活性化にだけ当てはまる話ではなく、自治会活動などの身近な活動にも通じる点があり、うなずける点も多いのではないかと思います。

 そういう意味で、わが身を振り返ると大変耳が痛く、今後は他人事ではなく、当事者としての問題意識を持ち、自らの行動にできることから活かしていくようにしなければならないと考える次第です。