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技術資料・ソフトウェア / JICEの部屋(コラム)

マッカーサーの「日本人12歳説」の周辺

掲載日時:2015/07/08

国土政策研究所長 大石 久和

 佐藤健志氏は気鋭の論客として憲法前文をユニークに解釈した(『僕たちは戦後史を知らない』祥伝社)。憲法前文の「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは(略)国際社会において名誉ある地位を占めたいと思う。」を次のように分析したのである。

 彼は、「これは裏を返せば、自分からは『安全と生存』を確保するための行動を起こさないということではないか。しかも、そうすれば、国際社会において『名誉ある地位』まで、あわせ手に入るらしい。憲法前文は、『日本は生き残りをかけて、独自の国家戦略の追求を放棄する』と謳っているのだ。」と言う。

 その結果、アメリカの世界戦略を自己のものであるかのように重ね持つことで、時々を糊塗してきたのが戦後だったと言うのである。実に鋭い指摘だと言わなければならない。特に60年安保以降、経済成長による豊かさの追求だけが政治の目標になり、世界における国家の位置付け・役割・提案(何で尊敬される国となるのか、何で世界に貢献していくのか、アジアの平和をどう構築していくのか、などなど)を行ってきていない。

 存在していたのは、日米安保体制保持であり、最近では日米同盟の深化という日本とアメリカの関係論だけだった。自らの存在をアメリカに"預けて"きたのである。

 ここで、そのアメリカ人の日本人観にふれておくのも無駄なことではあるまい。彼らはすがりつこうとするわれわれをどう見てきているのか。

 石原慎太郎氏は文藝春秋2014・9号で、第二次大戦終了時に書かれたニューヨークタイムズの日本とドイツに関する評論を紹介している。

 まず日本については、

 「この醜く危険な化け物は倒れはしたがまだ生きている。われわれは世界の安全のためにこれから徹底してこの怪物を解体しなくてはならない」と書いた。

 一方、ドイツに関しては、

 「この優秀な民族はナチスによって道を誤ったがその反省の上に立ち良き国をつくり直すだろう。われわれはそのために協力しよう」と記述した。

 ドイツ人は同じ人間だが、日本人は人間以前の怪獣か化け物として認識していた。戦時中、アメリカは敵国のなかでも日本人だけを長期間キャンプに隔離し、在アメリカ日系人の財産と自由を奪ったのもこんな認識からだった。アメリカは原爆投下まで日本が降伏しないように作戦したとの説があるが、あながちウソとも言えない感じがしてしまうのだ。

 続いてマッカーサーである。彼は、1951年5月3日、アメリカ上院軍事外交合同委員会において、次のように議会証言した。

 「蚕を除けば日本原産のものは実質的に何もありません。彼らはウールを欠いている。綿を欠いている。彼らは石油製品が不足している。彼らはスズを欠いている。彼らはゴムを欠いている。彼らはアジア地域に存在する多くの物資を欠いている。彼らは、それらの供給が絶たれた場合、日本では1000万から1200万までの人々が失業するだろうと恐れていた。戦争に突入した彼らの目的は、主に安全保障上の観点からのものであった。」

 この議会証言を根拠に、マッカーサーは先の大戦を日本の侵略とは考えていなかったのだとする意見もある。

 その2日後の5日にも、同じ委員会で、次のように証言した。

  1. 「科学、美術、宗教、文化などの発展の上から見て、アングロ・サクソン民族が45歳の壮年に達しているとすれば、ドイツ人もそれとほぼ同年齢である。
  2. しかし、日本人はまだ生徒の段階で、まだ12歳の少年である。
  3. ドイツ人が現代の道徳や国際道義を守るのを怠けたのは、それを意識してやったのであり、国際情勢に関する無知のためではない。ドイツが犯した失敗は、日本人の失敗とは趣を異にするのである。
  4. ドイツ人は今後も自分がこれと信ずることに向かって行くであろう。日本人はドイツ人とは違う。」

 これは、マッカーサーの「日本人12歳説」として有名であり、彼を神のように敬ってきた日本人の多くはこの発言で一瞬に冷めてしまった。このマッカーサーの日独認識と先のニューヨークタイムズの認識には、驚くほどズレがない。

 これらの日本人観は、戦争直後だけのものではない。ジョージ・W・ブッシュ大統領は、2007年のアメリカ退役軍人大会において、戦時中の日本軍をアルカイダにたとえ、「それを打ち破ったことで日本の民主化に成功した」と述べた。

 また、「日本を民主化できたのだからイラクにできないことはない」との発言もあり、これに大きな違和感を覚えた記憶がある。「主権在民」は戦後のことだとしても、戦前の日本人が他の先進国以上に抑圧や圧政という非民主的環境下で過ごしてきたわけではない。

 日本が税金の多寡にかかわらず男性全員が投票権が持てる普通選挙法を公布したのは昭和初期の1925年のことだし、女性の参政権獲得は戦後のことだが、フランスとは同時期であった。こう見てもアメリカに民主化してやったなどと言われる筋合いはない。しかし最近の大統領がこのような日本認識であったことは知っておかなければならないのだ。

 また、キッシンジャーは同僚の大学教授に対して、「日本人は論理的でなく、長期的視野もなく、彼らと関係を持つのは難しい。日本人は単調で、頭が鈍く、自分が関心を払うに値する連中ではない」と語っている。さらに、彼は中国人と比較して「彼らは世界的視野を持つが、日本人は部族的だ」とも言っている。

 われわれがすり寄ろうとしているアメリカ人の日本人観は、一貫して紹介してきたとおりなのである。われわれはこれをよくよくわきまえておく必要がある。