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技術資料・ソフトウェア / JICEの部屋(コラム)

道路投資増やす欧州各国

掲載日時:2007/12/27

国士技術研究センター理事長
大石 久和

 第23回世界道路会議がパリで開かれ、国土交通省が技術開発を進めている「誰もが自律的に移動できる交通環境整備(自律移動支援プロジェクト)」の実験的紹介も兼ねて出席した。見聞した欧州連合(EU)の道路政策は、日本にとって非常に参考になると思う。

 この会議は、道路技術や政策の向上を目的に4年に1度開催されている。1909年の第1回大会に日本も参加し、1世紀を経た今年は、111の加盟国から約3500人が参加した。

 

 今回の会議では、渋滞対策、交通安全、道路の維持と管理、災害対策など道路にかかる広範囲な技術的課題について活発な意見交換が行われた。

 特に各国の交通担当大臣が出席した会合では、「道路利用者課金(税財源や料金の負担)の可能性と限界」について議論がなされた。日本でも今、自動車利用者の負担で賄われている道路財源の使途について議論があるが、会議では、大気汚染や渋滞による損失といった社会環境コストに見合う道路課金が、道路の合理的な利用と経済発展環境保全に寄与するとして、各国間で今後研究を進めていく必要性が共有された。

 

 EUは厳しい財政状況の中でも、域内を一体的に発展させ、経済成長を続けるため、ネットワークの充実強化と良好な保全に努力を続けている。

 例えばスペインでは、1980年に日本の70%程度だった高速道路は、2005年には、約1.8倍に達し、地域の後進性を解消するために、高速道路の8割が無料化されている。

 さらにイギリスでは、07年には、10年前の6倍の公共純投資(維持管理費を除き、道路などすべての公共投資)を行っている。フランスでも、道路や鉄道などすべての交通インフラヘの投資政策を変更し、交通関係社会資本整備基金を創設して、投資の拡大を図っている。

 また、イタリアも「道路整備への投資を怠っては、競争に生き残れない」という理由から、優先投資事業を定めて成長に寄与する公共事業に重点的に投資を伸ばすこととし、大規模な5年計画を策定している。

 

 各国の道路など交通に関する努力から大いに考えさせられることがあった。例えば、リンクがつながることで代替性豊かなネットワーク網が構成され、それが効率的な物流や人流をもたらすことを道路政策をつかさどってきた私たちは、国民に十分な説明をしてきたのか。また、迂回を強いる道路として、なかなか地域に受け入れられなかった環状道路が、広域的に多くの渋滞個所を改善し、広範囲な交通の円滑化を実現できることを示してきたのか。これまで、あまりにも部分的な隘路打開のための説明に終始してきたのではないか一と、強く反省させられたのである。

 

 日本は今、世界に比して成長しない経済や低下し続ける経済競争力に悩み、先進国で群を抜く勤労者の長時間労働、深夜勤務を解消できないでいる。こうした諸問題について、構造改革での解決が模索されているが、道路整備が果たす競争力強化効果について、広範で正確な情報提供が今こそ必要と思う。

 交通環境整備の一環である自律移動支援プロジェクトは、歩道の点字ブロックなどに埋め込まれたセンサーが、視覚障害者のつえに内蔵されたセンサーを通じて道路情報を伝え、障害者が自律的に移動できるという世界初のシステムである。参加各国から多くの関心が寄せられたことを付記しておきたい。

(読売新聞朝刊 12面 2007年(平成19)11月16日(金))