JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞者の声

建設分野の新技術への挑戦

第12回国土技術開発賞

優秀賞 ジャケット式桟橋の長期防食システム 技術開発者 藤川敬人 受賞コメント

第12回国土技術開発賞 優秀賞 ジャケット式桟橋の長期防食システム
技術開発者 新日鉄エンジニアリング(株) 藤川敬人

受賞にあたって

 この度は、優秀賞を賜り誠に光栄に存じます。私は対象技術の内、特にチタンカバープレートの開発に従事してきました。この間、多くの関係者にご指導、ご協力をいただきましたこと、皆様に心から御礼申し上げます。

本技術は、羽田空港D滑走路などの海上空港や港湾施設に用いられる鋼製ジャケット式桟橋の防食ライフサイクルコストを大幅に低減する新たな防食システムであり、防食面積の大きい大気部では、塩分・雨水の侵入を防止するチタンカバープレートを上部工桁の裏面・側面部に取り付け、床版とカバープレートによって構成される内部空間の湿度を低く保つことで腐食を防ぐシステムとしました。大気部に用いるカバープレートは、0.35mmのチタンを配したパネルで、軽量で、暴風に耐え、作業足場としての利用が可能です。現在建設中の羽田D滑走路では、従来工法と初期コストは同等で、100年間のライフサイクルコストはマイナス80%となっています。

 また、薄膜ステンレスライニングの溶接接合については、

@ 薄膜溶接用のインダイレクトシーム溶接+プラズマ溶接の複合自動溶接法の開発
A ライニング巻きつけ精度の向上、溶接前の鋼表面処理の自動化、による溶接条件の安定化
B リークテスト法による品質保証要領の確立
C 溶接部の溶接後表面研磨処理法の確立による熱影響部の耐食性低下の回避
によって、薄膜ライニング材を用いた高能率施工法を確立し、施工コストの低減、安定品質、安定性能の確保、が可能となりました。
 今後も、耐海水性ステンレス鋼ライニング技術の適用を通じて、海洋・港湾鋼構造物等厳しい腐食環境にさらされる鋼構造の、長期耐久性の確保、ライフサイクルコストの低減、に貢献していきたいと思います。

受賞後の動き

 海上桟橋だけでなく、一般的な鋼製橋梁でも防食ライフサイクルコストの低減は重要課題であり、合わせて近接目視点検による維持管理が重視されてきています。チタンカバープレートのチタンを使用した外皮材はステンレスや重防食鋼板に置き換えることが可能で適用環境や供用期間に応じた選定が可能です。今後は、鋼製橋梁へのカバープレート適用を図り、常設足場機能と防食機能による予防保全により、ライフサイクルコストの低減、長寿命化に貢献していきたいと思っています。