JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞者の声

建設分野の新技術への挑戦

第9回国土技術開発賞

最優秀賞 石垣修復支援システム 技術開発者 西村 正三 受賞コメント

第9回国土技術開発賞 最優秀賞石垣修復支援システム  (3Dモデル配置システム)
技術開発者 西村 正三

受賞にあたって

高い精度が要求される「皇居中之門石垣」の修復を実現するために「石垣修復支援システム」がお役に立つことができ感謝の気持ちでいっぱいです。

3Dレーザを使用し効率よく3次元形状を取得

近年、城石垣をはじめ文化財建造物等への関心が著しく高まっており、その迅速かつ適切な調査や保存修理、公開活用の推進が特に重要になっています。これまで調査や保存修理等は、専門技術者・技能者が伝統的技法を駆使して実施されてきました、また今後ともこれらの技術・技能が中心をなすのは間違いありませんが、そのさらなる高度化、効率化、また国民への理解を深めるため、急速に発展しつつある先端情報解析技術による支援が必要となっています。このような背景の元、私たちは、まず建造物の形状を安全にかつ効率よく取得する手段として、写真測量や3Dレーザを使用し、これらのデータを3次元的に可視化することから始めました。3次元可視化は、文化財担当者を始め、技術者の判断を補助し、様々な検討作業などを迅速に処理し、情報公開用などの説明補助システムとして利用できます。

最先端の三次元シミュレーション技術と石工の技を融合

個々の石材の全側面を、詳細に3Dモデル化したうえで、石材同士の干渉状態を可視化して評価できるようにしました。また石工の伝統的な技を修復設計・組積工事へ反映させるために、操作が容易で、施工の概要が理解しやすい可視化表現にも工夫しました。そこで計画段階から経験豊富な石工と意見交換しながら修復計画を策定することができ、石工の伝統的な技を設計段階で取り込むことができ、まさに最先端の三次元シミュレーション技術と、石工の技を融合させ、石積み技術の伝承を手助けするシステムとして、社会へ貢献ができるものと考えます。

受賞後の動き

今後は、通常の石垣−打込接(ウチコミハギ)にも対応できるように開発を進めていきたいと考えます。またより簡易に3Dレーザ計測とデジタル写真計測を併用した計測システムの構築を行ない、文化財の保存記録における高度情報化、修復関係者の負担軽減、コスト削減へつなげ、長く文化財を後世に継承していくためのシステム化に貢献したいと考えます。