JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞者の声

建設分野の新技術への挑戦

第15回国土技術開発賞

最優秀賞 ソイルセパレータ・マルチ工法 技術開発者 泉信也 受賞コメント

第15回国土技術開発賞 最優秀賞 ソイルセパレータ・マルチ工法
技術開発者 東亜建設工業(株) 泉 信也

受賞にあたって

このたびは国土開発技術賞最優秀賞という大変名誉ある賞を賜り、開発担当者として身にあまる光栄を感じております。これも本技術の開発に際して、多くの皆様からご指導ご支援をいただきました賜物と心より御礼申し上げます。

本技術は、元々は浚渫土砂などの建設発生土の大容量分級処理技術「ソイルセパレータ工法」として第6回国土技術開発賞入賞をいただいた技術を基本としております。しかしながらソイルセパレータ工法では、建設発生土から砂を分級できるものの、分級のために加水した水とシルト・粘土が混合した大量の泥水が発生し、それを有効活用する方策がなかなか見い出せませんでした。

それに対して、今回の受賞技術「ソイルセパレータ・マルチ工法」では、従来と同様に砂を分級できるとともに、シルト分も脱水された状態で分級することができ、粘土分も脱水フロックとして分離できます。脱水後の水は、改めて土砂の加水調整用に再利用するため、泥水の処理・活用というソイルセパレータ工法の課題を解決することができました。

昨年、国土交通省の平成23年度補正予算建設技術研究開発助成制度(震災対応型技術開発公募)に採択され、ソイルセパレータ・マルチ工法を活用して津波堆積土砂を分級、再利用するという実証実験を宮城県気仙沼市内で行うとともに、産学官テーマ推進委員会の委員の皆様から貴重なご意見ご指導をいただき、再利用が難しいと思われた粘土分の脱水フロックについても建設材料として有効活用する方策を見出すことができました。 このような機会を与えて下さいました国土交通省関係各位や産学官テーマ推進委員会の皆様、また助成研究にあたってご協力いただいた方々にはこの場をお借りして厚く御礼申し上げます。

本技術の開発にあたっては、機械メーカーや土砂処理・水処理に知見のある方々にも数々のご指導ご協力をいただきました。建設発生土や津波堆積土砂を何とか全量有効活用したいという思いに対して、各方面の皆様のご賛同ご支援をいただけたことが今回の最優秀賞受賞につながりましたと思います。重ねて御礼申し上げます。

また本技術が、東日本大震災被災地の一日も早い復旧復興の一助になれば幸いと思っております。

受賞後の動き

本年6月に、東北大学大学院環境科学研究科高橋弘教授の研究グループによる「瓦礫混じり津波堆積物の再資源化社会実験」(一般社団法人東北地域づくり協会震災復興支援技術開発事業)にも参画させていただきました。この再資源化社会実験では、本技術によって分離された粘土分の脱水フロックと、古紙破砕物(ボンテラン工法:第9回国土技術開発賞入賞)を混合することにより、津波堆積物に含まれる粘土を緑化基盤材や盛土材として活用する一連の実験を行い、各方面の方々にご見学いただきました。

被災地では建設材料の不足も伝えられており、復旧復興の一助となる取り組みを引き続き行っていきたいと思いますので、皆様のご指導ご支援よろしくお願いいたします。