JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞者の声

建設分野の新技術への挑戦

第17回国土技術開発賞

優秀賞 丸太打設による液状化対策と地球温暖化緩和策 技術開発者 沼田淳紀 受賞コメント

第17回国土技術開発賞 優秀賞 丸太打設による液状化対策と地球温暖化緩和策
技術開発者 飛島建設株式会社  氏名:沼田淳紀

受賞にあたって

 この度は、名誉ある国土技術開発賞優秀賞を賜り、身に余る光栄でございます。御支援御協力を戴きました皆様に、厚く御礼申し上げます。

 本技術は、かつて土木分野においても多用されていた木材を使用して液状化対策を行うものです。

 本技術は、福井県における軟弱地盤対策で着想に至り、福井工業高等専門学校や福井県の方々とで地中における丸太の調査を実施したことが始まりでした。その後、森林、木材、環境、土木の研究者にお声掛けし、「温暖化対策のための木材利用研究会」を発足し、地球環境や森林、木材について勉強を行うことから研究が始まりました。この研究会は、他学会や委員会とも連携し、その後、(一社)日本森林学会、(一社)日本木材学会、(公社)土木学会による「土木における木材の利用拡大に関する横断的研究会」へと発展し、さらには、土木学会の木材工学委員会の発足にも発展しました。この間、第一線の方々から多くの知識を得たことは、言うまでもありません。

 その後、ここで出会った方々と、国土交通省、農林水産省、文部科学省、林野庁はじめの機関より助成を受け研究開発を行うことに恵まれ、飛躍的に技術開発を前進させることができました。最終段階では、浦安市が2011年東北地方太平洋沖地震で被災した運動公園を各種液状化対策工法の実証試験現場として提供するという公募を行い、その一つに選んでいただきました。これを機に、一気に実用化が図られ、浦安市内の公共施設にも本技術を使用して戴き、建築技術性能証明、建設技術審査証明を取得するに至りました。

 この間、社内は勿論、社外を含めた多くの方々に御指導御協力を賜りました。また、一緒に取組みながらも、志半ばでこの世を去られた方もいらっしゃり、大変残念に思うとともに、生きている以上その思いを継承しなければと思い続けています。さらに、私共が知らないところで、陰になって支えてくださった方も多くいらっしゃるはずです。

 多くの方々に支えられた恩返しは、唯一、本技術を成就させ、新たな木材利用を創出し、持続可能な建設事業により、安心安全の確保と地球温暖化緩和を行い、林業再生とその波及効果を実感として持てるようになることだと考えています。まだまだ実感できる段階にたどり着いておりませんが、この度、名誉ある賞を賜り、ようやく目に見えた一つの峠にたどり着けたように思います。

 かさねて関係各位に深く感謝申し上げます。

受賞後の動き

 木材の支持力に期待せず、地中では木材が腐らないことから新たに体積維持に着目して、丸太を液状化対策として大量に使用した工法は、世界的にも例がなく、実用化されたものの、まだまだ開発を進めなければなりません。車で言えば、やっとエンジンを車に乗せ、動かすことができ、世界で初めて商用化した段階だと思っております。今後、より速く安全に、燃費がよく、快適な乗り心地の車に仕上げていく必要があります。地球温暖化緩和に貢献できる持続可能な減災対応技術は、海外でも望まれるはずです。海外でも売れる、よりよい車に仕上げるためにも、ますます努力し、今まで御支援くださった皆様に、実感できる形で恩返しをしていかなければならないと考えております。
 今後も、御指導御鞭撻賜りますように何卒よろしくお願い申し上げます。