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調査報告・研究成果 / 国際協力活動

第19回 日・韓建設技術セミナー開催報告

開催経緯

JICEは、韓国の建設技術分野における専門研究機関である韓国建設技術研究院(以下、KICTという)と建設技術の交流を図り、また両国の友好と親善に寄与することを目的として平成2年(1990年)から毎年、日・韓建設技術セミナーを開催しています。このセミナーを通じて、お互いに意見交換を行い、さらに見識を深め、JICEが実施する調査研究に反映するよう取り組んでいます。

セミナーの概要

今回のセミナーは第19回目を迎え、去る平成20年9月2日(火)に韓国のKICT本館地下1階の大講堂にて開催されました。JICEからは、大石理事長を団長とする計10名のJICE役職員が参加しました。

本年度より、相互の理解をより深め議論を活発化させるために、共通の課題4テーマを設定し、すべて討論形式で行われました。今回のセミナーは、討論形式としたこともあり、内容の濃いセミナーとなりました。

表−1 JICEからの参加者
団 長 大石 久和 理事長
団 員 平野 勇 常任参与、情報・企画部長
湧川 勝己 情報・企画部 次長
福田 健 情報・企画部 主任研究員
渡邉 泰也 調査第一部長
岡安 徹也 調査第一部 首席研究員
佐古 俊介 研究第二部 上席主任研究員
森田 康夫 研究第二部 次長
池内 通 研究第二部 上席主任研究員
林 隆史 ITS企画推進室 次長

第19回 日・韓建設技術セミナープログラム

<開会式>

開会の辞 禹 孝 燮(KICT院長代理)
祝  辞 大石 久和(JICE理事長)
KICT発表者紹介 柳 海 雲(KICT企画調整室長)
JICE発表者紹介 平野 勇(JICE情報・企画部長)

<事業概要紹介>

KICT事業概要 柳 海 雲(KICT対外協力室長)
JICE事業概要 平野  勇(JICE情報・企画部長)
19回日韓セミナーにおけるパネルディスカッション

各発表の要旨

<パネル討論>

T. 安全で便利な移動の実現に向けた道路空間形成方策に関する検討
  内    容 発 表 者
発表1 韓国における都市洪水災害の特性とEFVSを用いた脆弱性分析  KICT 道路研究室 先任研究員
韓国では、「交通弱者の移動便宜増進法」の施行を受けて歩行優先区域事業が推進されている。ここでは、施設設置者とエンドユーザーの意見を踏まえ、歩行優先区域事業の背景とモデル事業の取り組みについてまとめると共に、これまでの検討結果とその議論について報告している。
発表2 道路におけるユニバーサルデザインを目指した調査研究 林 隆 史 JICE ITS企画推進室 次長
日本では、交通バリアフリー法とハートビル法が統合・拡充された「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(バリアフリー新法)と道路移動等円滑化基準が2006年12月に施行されている。ここでは、日本における道路空間のバリアフリーに関する取り組みや、ガイドライン作成にあたりユニバーサルデザインの考え方に配慮して検討してきたいくつかの特徴的な点について紹介している。
座  長 魯 官 燮(KICT水資源研究部長)
パネリスト 趙 惠 珍 KICT 道路研究室 責任研究員
林 隆 史 JICE ITS企画推進室 次長
<パネルディスカッションでの主な論点>
次のポイントを中心に議論が進められた。
  • 歩道上の不法占有施設の整備及び地方自治体での対策(手続き、整備)
  • 歩行空間確保のための駐車対策
  • 地域別特性が考慮された歩行優先区域の整備
  • 歩行環境改善事業以後の維持管理
U. 災害事例調査を通した堤防技術の開発及び崩壊影響の検討
  内    容 発 表 者
発表1 河川堤防の洪水被害特性及び氾濫現象に関する実験研究 尹 光 錫 KICT 河川・海岸研究室 責任研究員
韓国の堤防崩壊事例の類型を調べると共に、堤防崩壊による堤内地氾濫の危険性について水理実験を行って推定している。また、毎年増加しつつある越流崩壊への対策として越流保護工の必要性が提起されているため、堤防裏法面の洗掘を防止する保護工について検討し、施工性、経済性、環境調和性が確保された有孔ブロックと急勾配の水路を製作して水理実験を行うことで、有孔ブロックの安定性を調べている。また、保護工の設計手法の適用性について検討した内容について報告している。
発表2 被災から学ぶ堤防技術 佐古 俊介  JICE 調査第一部 上席主任研究員
堤防の不安定化、変形メカニズムについては、水理学、土質工学上の観点から全てが解明されているわけではなく、堤防の安全性について評価する際の条件設定は、高度な技術的判断を必要としているため、被災事例や洪水時に堤防に現れる各種変状等の発生原因を解明し、その知見を照査手法へフィードバックすることにより、設計法の完成度を高めていくことが重要である。ここでは、洪水時に堤防において発見された被災のメカニズムを解明し、そこから得られた技術的知見を堤防の設計法にフィードバックした日本の事例について紹介している。
座  長 金 圭 浩 KICT 河川・海岸研究室長
パネリスト 金 圭 浩 KICT 河川・海岸研究室長
渡邉 泰也 JICE 調査第一部長
<パネルディスカッションでの主な論点>
次のポイントを中心に議論が進められた。
  • 洪水政策上の堤防機能及び役割
  • 技術的側面からの堤防の安全性
  • 堤防被害原因調査方法の現況及び改善方向
  • 今後の対策と関連研究内容
V. 優秀な技術力を活用した治水計画の立案支援方策に関する検討
  内    容 発 表 者
発表1 気候変動と異常気象に対応した異常洪水脆弱性分析システムの開発 金 炳 植 KICT 水資源研究室 先任研究員
異常洪水を評価するための定量手法として地域の異常洪水脆弱性指数を開発するとともに、この指数を用いてGIS基盤の脆弱性評価システムを構築することを目的としている。ここでは、異常洪水に対する戦略として、気候変化が水工構造物に及ぼす影響について正確に評価するために、高解像度の地域気候モデルを用いて気候変動が朝鮮半島の持続時間24時間確率降雨量の特性に及ぼす影響について評価するとともに、異常気象によって発生し得る降雨量について分析した結果をシステムに適用して脆弱性を評価した内容について報告している。
発表2 損失余命を用いた洪水のリスクコミュニケーションに関する研究 岡安 徹也 JICE 調査第一部 首席研究員
洪水氾濫によるリスクは、これまで「○○年に1度程度浸水する可能性がある」という言葉で説明されているだけであり、氾濫原に居住する人々に対して必ずしも十分な理解を得られていない。ここでは、洪水氾濫のリスクについて流域住民と適切なコミュニケーションを行うために、環境リスクを表現する際にたびたび用いられる損失余命等を用いたリスク表示方法について検討を行った事項を報告している。
座  長 李 ヘ 善 KICT 建設管理研究室 責任研究員
パネリスト 金 源  KICT 河川・海岸研究室 責任研究員
渡邉 泰也 JICE 調査第一部長
<パネルディスカッションでの主な論点>
次のポイントを中心に議論が進められた。
  • 日韓の気候変動による洪水への影響予測概要
  • 日韓の気候変動による洪水への適応策の考え方
  • 実効性のある対応・対策に向けて取り組むべき技術開発
W. 品質管理の発展に向けた発展方向の設定と準備事項
  内    容 発 表 者
発表1 品質確保体系の改編方向に関する提言 朴 炯 根 KICT 建設管理研究室 責任研究員
韓国内の建設工事に適用される品質管理体系は建設技術管理法の制定により、ようやく成立し、その後に数十回にわたる改正と改善を繰り返し現在に至っているが、未だ改善すべき事項に関する指摘が数多く提起されている。例えば1997年にはISO9001による品質マネジメントシステムが導入されて、10年も経過しているにもかかわらず、未だに建設現場業務に定着できていない状態である。ここでは、建設産業の品質水準の向上と、国際的な基準に基づく効率的かつ合理的な当事者中心の自主的な品質確保体系の構築のために、現行体系の問題点を分析し、今後行われる改編の方向に関して提言している。
発表2 建設生産システムにおける品質確保の方向性について 池内 通  JICE 研究第二部 上席主任研究員
ここでは、入札・契約制度の転換、行政事務の多様化・増大等の環境の変化の中で現行の建設生産システムでは対応しきれない様々な問題が顕在化してきているという意識の下に、今までの公共工事のマネジメントの枠組みを見直し、海外の事例なども調査しながら体系的に建設生産システムを整理することにより、発注者、設計者、施工者の各々が担うべき役割と責務を明確にした上で、品質確保のために、インハウスエンジニアだけでは不足する技術的判断等を外部から支援する仕組みの確立と、インハウスエンジニア等に蓄積された技術の伝承を両立するための体制のあり方について検討した成果について報告している。
座  長 鄭 漢 ヘ KICT 建設品質政策本部 先任研究員
パネリスト 鄭 漢 ヘ KICT 建設品質政策本部 先任研究員
森田 康夫 JICE 研究第二部 次長
<パネルディスカッションでの主な論点>
次のポイントを中心に議論が進められた。
  • 品質管理システムの重要性
  • 品質管理確保のための関連主体の役割及び責任
  • 品質管理制度・体制について

第19回セミナーは、成功裏に終わらせることが出来ました。セミナー開催にご尽力いただいた皆様に感謝申し上げます。

来年(平成21年度)は、日・韓建設技術セミナー20周年であり、日本での開催となります。JICEとKICT両機関の有意義な技術交流の場となるよう準備を進めて行きたいと思います。

19回日韓セミナーを終えて