| 過年度までの助成実績 |
催芽種子を用いた在来木本種による法面緑化に関する研究
助成研究者
| 氏名 | 所属 | |
| 研究代表者 | 市栄智明 | 高知大学農学部森林科学科 |
研究内容
自然環境復元や温室効果ガスの削減の観点から、これまで用いられてきた外来草本種に変わり、在来木本種を用いた緑化技術の確立が求められている。しかし、木本種の低い発芽率や、発芽・成長に時間を要するといった問題から、木本種を用いた緑化の取り組みはそれほど進んでいないのが実情である。この研究では、主にイネ栽培で用いられてきた催芽(種子が吸水して活性化した段階で発芽を停止させた状態。活力が高い状態のまま保存されるため、播種後早期に発芽成長することが知られている)の技術を在来木本種においても確立させ、その技術を緑化に応用することにより、環境・景観に考慮した在来木本種による緑化技術の向上を目指した。
まず、緑化への導入が期待される木本樹種4種(ヤシャブシ、ネズミモチ、ヤブツバキ、アラカシ)、草本種2種(ススキ、ノシバ)について、木本用に開発した催芽機の試作機(写真1)を用い、最適な催芽条件を調査した。その結果、アラカシとネズミモチについて、催芽機の使用によって発芽に必要な時間が大幅に短縮した(図1)。そして、最適な前処理条件や、催芽機投入後の最適水温条件を両樹種について導き出すことが出来た。しかし、他の樹種については、催芽機による発芽促進効果は見出せなかった。この原因は、発芽に必要な光や酸素量の不足など、樹種ごとに様々であることが考えられた。今後は、催芽誘導に適した樹種の選定を行っていくとともに、催芽機内の光環境や水分溶存酸素量などを改良していくことにより、より実用性の高い催芽機の開発が可能になると思われる。
また、今回高い確率で催芽誘導が出来たアラカシとネズミモチについては、最適芽止め乾燥条件や冷蔵保存条件についても詳細に調査した。これらの調査は、催芽種子の搬送や保存等、実用化の際に非常に重要になる。調査の結果、催芽種子を芽止め乾燥処理後に2週間の冷蔵保存を行った状態でも、アラカシ・ネズミモチともに高い2次発芽率が得られ、特にアラカシの催芽種子は通常種子よりも高い発芽速度を示した。両樹種ともに、催芽状態の種子が、早期緑化への利用に十分利用可能であることが明らかになったと言えよう。現状の緑化現場では、木本種の利用は苗木での植栽が主であるが、木本種子での催芽技術を確立し、実用化することにより、近い将来より低コストで環境に配慮した新しい緑化の形を提案できると考えている。今後は実用化に向け、催芽機に適した樹種の選定や、最適乾燥芽止め条件等、催芽機のソフト面での充実を図るための基礎試験を行っていく必要性がある。



