過年度までの助成実績

超鉄鋼高力ボルトを用いた摩擦接合パイロット試験

助成研究者

  氏名 所属
研究代表者 山口 隆司 大阪市立大学 大学院工学研究科

研究内容

1.研究目的

 物質・材料研究機構(以下、NIMSと称す))では、超鉄鋼プロジェクトで開発されたボルト用プロトタイプ鋼を用いた超鉄鋼高力ボルトが開発されている。土木・建築分野では、板材などの鋼材の高強度化の取り組みに比べて、高力ボルトの高強度化の取り組みは遅れており、その高強度化が望まれている。本研究では、このような背景を踏まえ、通常の高力ボルトの1.6倍の強度を有する超鉄鋼高力ボルトの土木・建築構造物の摩擦接合継手への適用の可否を見極め、今後の実用化に向けた課題抽出を目的としてパイロット試験を行うこととした。

2.試験概要

 本研究では、以下の3つの試験を行った。

  1. 単純引張試験    (製品の引張強度・変形特性)
  2. ナット回転角試験  (導入軸力の設定)
  3. 摩擦接合継手引張試験  (すべり係数,高い軸力の影響)

3.単純引張試験

 本試験は、超鉄鋼高力ボルトに対して治具を用いて、引張力を作用させ、その変形性能、ボルト軸力の変化を調べるものであり、超鉄鋼高力ボルトの初期導入軸力を検討する上で重要な資料となる。破断後のボルトを 写真1 に、得られた荷重と伸びの関係を 図1 に示す。なお、供試体の記号の中の数字のうち、30、75はねじ部の長さを表している。

 通常の高力ボルト(M16)に比べてやや変形能が不足していることがわかる。

超鉄鋼高力ボルト


4.ナット回転角試験

 本試験は、超鉄鋼高力ボルトに所定の導入軸力を導入できるのかの可否について調べるとともに、適切な軸力導入方法を検討するためのものである。試験の状況を 写真2 に、ボルト軸力とトルクの関係を 図2 に示す。

超鉄鋼高力ボルト



 トルクとボルト張力の関係が線形関係となっており、トルク法による軸力の導入が可能であることがわかる。


5.摩擦接合継手引張試験

 本試験は、超鉄鋼高力ボルトにより高い軸力を導入することから、連結板や母板の局所的な降伏が継手強度に影響を与えることが危惧される。そこで、実際に近い板組構成の供試体に対して載荷試験を行いその適用の可否について検討するものである。載荷実験の様子を 写真3 に、荷重と変位の関係を 図3 に示す。

 試験の結果、すべり強度は、規準等で要求される強度を上回っており、板の局所的な降伏も外観からの観察では認められず、基本的には適用が可能と判断される。

摩擦接合継手引張試験



6.まとめ

 以上の試験から、基本的には超鉄鋼高力ボルトによる摩擦接合継手の適用には問題はないと判断される。また、F10Tまでを対象とした従来設計法を適用することについても問題はないと判断される。ただし、これらの結論は限られた実験結果から言えることであり、さらに広範な載荷実験や有限要素解析により検証していく必要がある。また、実際の適用に向けて、最適なボルト形状、最適なボルト配置を検討していくとともに、遅れ破壊特性などの耐久性の検討が必要となる。


キーワード

超鉄鋼高力ボルト,摩擦接合継手

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