JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第16回国土技術開発賞

入賞(選考委員会委員長表彰)

自由形状・大口径高圧噴射攪拌工法 (第16回国土技術開発賞 入賞)

応募技術名称自由形状・大口径高圧噴射攪拌工法
副題副題:マルチジェット工法
応募者名前田建設工業(株)
技術開発者〔前田建設工業(株)〕 手塚 広明・山内 崇寛/〔(有)ニューテック研究社〕 中嶋 志朗
共同開発者(有)ニューテック研究社

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

地震大国の我が国では、近い将来に発生確率が高いとされる巨大地震の備えとして、既存施設を中心に地盤の液状化対策や耐震補強として地盤改良の必要性が高まっている。近年では、比較的小型な施工機械で既存施設の施工が行える高圧噴射攪拌工法を活用する事例が急増している。しかし、高圧噴射攪拌工法は施工コストが高くコスト縮減が強く求められている。また、本来仮設利用を目的で広く用いられてきたため、液状化対策や耐震補強といった恒久対策には、信頼性の高い品質を安定的に供給するための施工管理上の課題がある。

2.技術の内容

自由形状・大口径高圧噴射攪拌工法「マルチジェット工法」は、深層混合処理工法の高圧噴射攪拌工法の1つであり、小型なボーリングマシンを用いてセメントミルクとエアーの混合体を超高圧で地中に噴射して原地盤と混合攪拌することで標準強度1.0MPa〜3.0MPaのセメント改良体を造成する工法である。本工法は「合理的な改良によるコストダウン」、「高精度施工管理による信頼性の高い品質」「狭隘条件への適用性拡大」ことを特徴とする(図-1.2.1)。

従来工法は改良直径φ2.0〜5.0mの円柱状改良を中心としたものであるが、本工法は円柱状改良以外にも扇状・壁状・格子状といった自由形状改良(図-1.2.2)や最大直径φ8mまで任意改良径の設定が可能な大口径改良(図-1.2.3)を可能とすることで「合理的な改良によるコストダウン」を実現した。さらに、施工状況をリアルタイムで一元管理できる専用管理装置、造成直後に改良体を直接目視確認できるビデオコーン、任意の深度の未固結改良体を採取できるサンプリングコーンを開発することで「高精度施工管理による信頼性の高い品質」を実現した。また、表-1.2.1に示すように、従来工法と同程度である標準マシンに加えて、低空頭タイプや超小型タイプ(写真-1.2.1)を備え「狭隘条件への適用性拡大」した工法である。なお、超小型タイプは、既設戸建住宅に活用できる液状化対策工法として、平成23年度補正予算建設技術研究助成制度(国土交通省)の支援を受け行ったものである。

3.技術の効果

自由形状および任意径の設定可能な大口径改良から、必要改良範囲に対して無駄の少ない合理的な改良や施工本数の削減を可能とした。特に、地盤の液状化対策を行う場合、本工法の壁状改良の組み合わせで構築する格子状改良(写真-1.2.2)は、大幅に改良体積と削孔本数を大幅に削減し従来工法に対してコストを50%以上削減できる(図-1.2.4)。

さらに、改良体積の削減により造成時に発生する排泥量も低減するため、環境負荷も低減した循環型社会に貢献できる。排泥量を抑制した環境にやさしい工法として、平成21年度資源循環技術・システム表彰((財)クリーン・ジャパン・センター、後援:経済産業省)においてクリーン・ジャパン・センター会長賞を受賞した。

また、信頼性の高い品質を安定的に供給できる高精度施工管理を行うことで、地盤の耐震補強や液状化対策といった恒久対策にも適用することを可能とした。

4.技術の適用範囲

  • 土留壁の欠損防護・先行地中梁・底版改良や、シールド工事の発進・到達防護(仮設利用)
  • 橋脚や橋台基礎直下の地盤改良、ボックスカルバートなどの地中構造物側方改良による耐震補強
  • 格子状改良による液状化対策・護岸や岸壁の側方流動対策
  • 格子状改良による既設戸建住宅の液状化対策

5.技術の適用実績

東京都勝島ポンプ所流入管渠工事その2、平成22年 8月〜平成22年10月   他29件

写真・図・表

図-1.2.1 マルチジェット工法の特徴

  • 図-1.2.2 自由形状改良
  • 図-1.2.3 大口径改良
  • 表-1.2.1 施工マシン一覧
  • 写真-1.2.1 既設戸建住宅での施工イメージ
写真-1.2.2 壁状改良による格子状改良例 図-1.2.4 格子状改良比較