JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第11回国土技術開発賞

入賞(選考委員会委員長表彰)

HSPC構真柱 (第11回国土技術開発賞 入賞)

応募技術名称HSPC構真柱
副題超高強度プレキャスト鉄筋コンクリート構真柱の開発と超高層建物への適用
応募者名大成建設(株)
技術開発者〔大成建設(株)〕服部 敦志・山本 佳城

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

 鉄筋コンクリート構造物の逆打工法では,構真柱をプレキャスト化することにより,これを本設躯体としてそのまま活用できるようになるため,地下工事の更なる合理化と工期短縮を図ることができる。しかしながら,超高層建物の場合では,地下柱の大型化により,プレキャスト化した構真柱の重量が増大するために建込みが困難となる。このような問題に対して,コンクリートの高強度化による部材断面の縮小効果を利用したHSPC(High Strength Precast Concrete)構真柱を開発し,超高層建物へのプレキャスト構真柱の適用を可能とした。

2.技術の内容

1. プレキャスト構真柱に超高強度コンクリートを適用することにより(実施適用例では,設計基準強度[Fc]で最高100N/mm2),所要の構造性能を確保するための部材断面を縮小し,建込み時の重量を軽減させた(図-1)。また,HSPC構真柱をプレキャスト工場で分割作製し,これらを現場で一体化させる方式とすることにより,プレキャスト工場での製作・吊込み,現場への運搬を可能とした。
2. HSPC構真柱を用いた逆打工法では,@分割作製した構真柱の一体化およびA建込みを実施した後に,B掘削,C床付け,D躯体構築を上階から先行して進め,最下層までB〜Dを繰り返すことにより,地下躯体を構築していく工程となる(写真-1)。

3.技術の効果

1. HSPC構真柱では,これがそのまま本設躯体となるため,仮設鉄骨構真柱を利用する逆打工法と比較して,@地下柱の構築,A柱頭部分の打継ぎ処理,B柱梁接合部におけるコンクリートの打分け,が不要となるほか,C仮設鉄骨の削減により柱の配筋納まりが簡素化する(図-2)。これにより,超高層建物の地下工事においても,更なる合理化と品質の向上が図れると同時に,後作業の省力化と工期短縮を可能とする。
2. HSPC構真柱では,仮設鉄骨の削減とプレキャスト化による木製型枠の削減により,省資源化を図ることができる。また,超高強度コンクリートの採用による柱断面の縮小により,主にコンクリートの使用量が削減されるため,CO2排出量の抑制に貢献する(図-3)。

4.技術の適用範囲等

● 50階(高さ180m)程度までの超高層建物に適用可能。
● 地下2階(HSPC構真柱の吊込み重量が60t程度)までの地下工事に適用可能
● Fc100N/mm2までのHSPC構真柱の製作が可能

5.技術の適用実績

東池袋四丁目第2地区(再)特定業務代行建設工事、平成19年11月〜平成21年3月

写真・図・表

@ 構真柱の分割作製・一体化 A 建込み B 掘削
C 床付け D 梁床躯体構築 E 最下層掘削完了
写真-1 HSPC構真柱による逆打工法の流れ