JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第12回国土技術開発賞

優秀賞(国土交通大臣表彰)

非接触肉厚測定装置 (第12回国土技術開発賞 優秀賞)

応募技術名称非接触肉厚測定装置
応募者名(独)港湾空港技術研究所
技術開発者〔(独)港湾空港技術研究所〕吉住夏輝/〔国土交通省 関東地方整備局〕白井一洋
共同開発者国土交通省九州地方整備局下関港湾空港技術調査事務所

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

 鋼材は、コンクリートに並ぶ主要な構造部材である。低コストで高い信頼性が得られるため、高度経済成長期には、鋼矢板式岸壁や鋼管杭式桟橋等の港湾鋼構造物が社会基盤として数多く建設された。近年、それらが老朽化して、問題視されるようになってきている。港湾にある鋼構造物の場合、その表面には、貝等の海生生物が付着していることが常である。従来の接触式の技術を適用する際には、それらを事前にケレン作業により除去しなければならない。この作業は多くの時間と労力を必要とするため、作業効率が悪く、サンプル測定で構造物の健全度を診断しているのが現状である。施設を安全に供用していくためにも、構造物の維持管理が重要であり、効率的に点検・診断を行える手法の確立が望まれている。

2.技術の内容

 水中において、付着物を除去することなく、非接触で鋼構造物の肉厚を効率的に測定できる装置である。単一の収束型超音波センサによる測定系で、超音波の多重反射を検出することにより非接触測定を可能にした。

3.技術の効果

 本装置では、付着物を除去する必要がないため、以下のような長所を有しており、飛躍的な作業効率の向上、コストの低減、安全性の向上を実現した。

  1. 従来技術のような点の測定だけではなく、線状の連続測定も可能である。
  2. ケレン作業による構造物の損傷がない。
  3. 産業廃棄物を生じることもなく、海を汚すこともなく環境に優しい。
  4. 比較的短い時間での測定が可能であるため、例えば、コンテナバースの場合、岸壁の占有時間を短くすることができ、経済活動への影響を小さく抑えることが出来る。
  5. この装置で得られる密で大量の測定データは、健全度診断の信頼性向上に寄与し、詳細な維持管理計画の策定が可能となる。
  6. ミニショベル等の利用による機械化を行うことで、施設の陸側からの肉厚測定が可能となる。
  7. 機械化による水中作業の無人化・省力化で、潜水士作業の必要がなくなり、安全で迅速な作業が可能となる。

4.技術の適用範囲

  • 鋼矢板式・鋼管杭式岸壁、鋼管杭式桟橋の港湾鋼構造物(実績ベース)
  • 発電所の取水路・放水路、船舶の船底の点検への適用範囲拡大が可能

5.技術の適用実績

八代国有港湾施設現況調査、平成22 年1月〜平成22 年3月 他1件

写真・図・表