JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第13回国土技術開発賞

入賞(選考委員会委員長表彰)

厚層化盛土管理用ラジオアイソトープ密度・水分計の開発 (第13回国土技術開発賞 入賞)

応募技術名称厚層化盛土管理用ラジオアイソトープ密度・水分計の開発
副題東京空港羽田D滑走路工事を早期着工に導いた厚層化施工技術
応募者名東亜建設工業(株)/ソイルアンドロックエンジニアリング(株)
技術開発者〔東亜建設工業(株)〕堺谷常廣/〔ソイルアンドロックエンジニアリング(株)〕吉村貢
共同開発者五洋建設(株)/東洋建設(株)/若築建設(株)

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

 平成22 年10 月に完成した羽田空港の4本目の滑走路である「羽田D滑走路」(写真−1)は、東京湾第一航路に接しているために運航船舶と航空機の制限表面の関係から滑走路標高が現空港より高く、海面より上方の転圧は、その土量が1,000 万m3 におよび、施工上のクリティカルパスとなった。盛土は、大型の振動ローラを用いた場合でも、1層当たり盛土厚50cm 〜 60cm までとすることが多い。D滑走路は、工事開始から供用開始まで41 ヶ月と極めて短い工期での完成が求められ、盛土厚を従来以上に厚層化して効率化をしなければ、工期内での完成は見込めない状況であった。厚層化盛土を行えば施工の効率化を見込めるが、盛土品質管理における計測計器で使用する放射線量の法規制の関係から、日常管理で簡易に使用できる計測機器は選択肢に乏しい。そのため、密度計測機器を新たに開発・実用化し、効率的な厚層化盛土の施工を可能にする必要があった

2.技術の内容

 今回開発した「1孔式RI 密度水分計」は、密度計プローブ、水分計プローブ、BG 計プローブの3種類のプローブとスケーラー、ガイドパイプで構成されている。各計測プローブは、先端部にRI および中性子の線源部を配置し、ロッド中間部に検出部(シンチレータ)を配置した“散乱型RI”方式を採用している(図−1)。“散乱型RI”方式は、線源部から検出部までのγ線や中性子線の散乱状況を検出することで、線源部から検出部までの間の密度および水分の平均値を計測するものである。従来の“透過型RI”方式のRI 密度・水分計では、厚さ30cm までの密度測定が限界であったが、“ 散乱
型RI”方式を用いることで法規制範囲内の少ない放射線量で、深さ1m まで任意の深さでの計測が可能となった(図−2、写真−2)。

3.技術の効果

「1孔式RI 密度水分計」を用いて厚層盛土の施工管理を行い、クリティカルである盛土転圧の工期について、12 ヶ月間要するところを、半分の6ヶ月までに短縮した。厚層化施工により施工機械台数の削減や、日当たり施工量の増大による輸送土運の大型化などの省力化が可能となり、従来の盛土と比べCO2削減など環境負荷低減に大きく貢献することができた。

4.技術の適用範囲

  • 大型盛土工事での厚層化施工の品質管理
  • 既設の盛土構造物の深部の性能確認
    盛土構造物の品質管理に限らず、広く盛土構造物の計測が可能である。

5.技術の適用実績

東京国際空港羽田D滑走路建設外工事、平成18年3月〜平成20年8月

写真・図・表