JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第13回国土技術開発賞

優秀賞(国土交通大臣表彰)

空港アスファルト舗装の層間剥離現象に関する赤外線を用いた検知手法 (第13回国土技術開発賞 優秀賞)

応募技術名称空港アスファルト舗装の層間剥離現象に関する赤外線を用いた検知手法
応募者名(独)港湾空港技術研究所
技術開発者〔(独)港湾空港技術研究所〕前川亮太
共同開発者横浜国立大学大学院 早野公敏

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

 近年、滑走路や誘導路のアスファルト舗装において、層間剥離現象が各地で発生している。層間剥離現象が進行すると舗装表面が隆起して舗装の破壊に至り(図−1)、航空機の安全な走行に重大な支障を来すおそれがあることから、早期の発見及び対処が重要である。

 層間剥離の探査にあたっては従来、路面をハンマーで叩いた際の反射音を基に層間剥離の有無を推定する打音探査法が用いられてきた(図−2)。しかし打音探査法には一定の技能を持った測定者が多数必要である上、作業時間に多くの時間を要することが課題となっていた。加えて、打音探査法では探査結果が測定者の主観に強く依存することから、経年的な調査が困難であることが空港管理上の支障となっていた。

2.技術の内容

 当該技術は、舗装の表面温度に着目し、層間剥離が発生している箇所と健全箇所との路面温度差から層間剥離による箇所を特定する技術である。表面温度の測定を迅速に実施するため、赤外線技術に着目した。赤外線カメラを自動車に積載させた装置(図−3)により、走行しながら舗装の路面温度を測定し、層間剥離箇所を検知することを実現した。

3.技術の効果

 当該技術により、空港の現場における作業所要時間の大幅短縮が可能となった。
 解析および実験の結果、夜間に剥離検知作業を実施する場合、層間剥離が発生している箇所は健全箇所と比べて少なくとも0.2℃程度、路面温度が低くなっていることが確認できた。このことから赤外線の適用により、測定者の主観によらない測定結果の客観性を確保しつつ、従来の打音法と比べて大幅に効率的な層間剥離探査手法を構築することができた。

4.技術の適用範囲

当該技術は、全ての空港のアスファルト舗装において適用することが可能である。滑走路及び誘導路等の舗装上の作業時間を大幅に短縮させることにより、利用頻度の高い滑走路や誘導路等においても適切に検知作業を実施することが可能となることから、多くの交通量を有する混雑空港において一層有効である。

5.技術の適用実績

 東京国際空港舗装剥離試験調査、平成21 年6月〜平成21 年9月

写真・図・表