JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第13回国土技術開発賞

優秀賞(国土交通大臣表彰)

連続SSRT (第13回国土技術開発賞 優秀賞)

応募技術名称連続SSRT
応募者名(株)フジタ
技術開発者〔(株)フジタ〕村山秀幸・丹羽廣海/〔(株)地球科学総合研究所〕黒田徹
共同開発者(株)地球科学総合研究所

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

 従来から、トンネル施工時に切羽前方予測を目的として実施する弾性波反射法では、探査時に特別な震源(発破や油圧インパクタ等)を準備する必要があり、この震源と振動観測機器(受振器や振動記録装置等)が坑内を占有するため掘削作業と競合することが課題であった。通常、爆薬を掘削に用いるトンネルでは、日常的に大きな振動を発生する発破を使用しており、この掘削発破を切羽前方探査に活用できないかとの現場からのニーズを具現化するために、(株)フジタと(株)地球科学総合研究所で共同開発を進めてきたSSRT(トンネル浅層反射法探査:Shallow Seismic Reflection survey for Tunnels)の応用技術として、掘削発破を震源とする連続SSRT の開発に着手した。

2.技術の内容

 連続SSRT とは、トンネル掘削発破(段発発破)を震源に用いる切羽前方地山の探査手法であり、段発発破における瞬発雷管から2段目雷管が起爆する段間時間(時間遅れ約250 ミリ秒)を活用して切羽前方約300m 区間を探査することができる。本手法は、探査精度の向上を目的として坑内と坑外に観測機器を常設し、発破振動を同時に記録することを特徴としており、発破時刻と振動を正確に記録するためにルビジウム刻時装置(原子時計:精度10のマイナス11乗 秒以下)を用いて坑内観測機器の内部時計の精度を確保している。よって、本手法の適用によってトンネル掘削サイクルに影響を与えることなく、連続的に切羽前方地山を精度よく予測することが可能となる。

3.技術の効果

 掘削発破を震源に活用する連続SSRT は、以下のような効果が期待できる。

  • 常設する観測機器が坑内を占有しないので、掘削サイクルに影響を与えずに連続的に探査できる。
  • 切羽前方地山の予測結果は、設計時における事前地質情報の不足や不確かさを補完し、安全で合理的なトンネルの設計と施工に寄与することができる。
  • 掘削発破は薬量が多く大きな振動を伴うため切羽前方300m 程度の探査が可能となる。
  • 坑内と坑外で同時に発破振動を記録するので、切羽前方地山の予測精度の向上が期待できる。
  • 特別な震源が必要ないので、従来のSSRT と比較して最大50%程度のコスト縮減が期待できる。
  • 従来からの切羽前方探査手法のように、坑内作業休止日に坑内設備を稼働させて探査する必要がないので、節電やCO2 の削減および労働時間の削減に寄与することができる。

4.技術の適用範囲

  • 掘削に発破(爆薬)を用いるトンネルであれば適用可能である。
  • トンネル平面線形が直線であることが望ましい。

5.技術の適用実績

 東九州道(県境〜北川間)古江トンネル南新設工事、平成20年11月〜平成22年4月 他2件

写真・図・表