JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第16回国土技術開発賞

優秀賞(国土交通大臣表彰)

走行型計測技術による高精度地形測量及びトンネル調査 (第16回国土技術開発賞 優秀賞)

応募技術名称走行型計測技術による高精度地形測量及びトンネル調査
副題画像撮影,レーザー計測,レーダー探査を統合したMIMM-R及びMIMM2号機
応募者名パシフィックコンサルタンツ(株)
技術開発者〔パシフィックコンサルタンツ(株)〕安田 亨
共同開発者計測検査(株)/三菱電機(株)/(株)ウォールナット

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

近年,橋梁やトンネル等の土木構造物の維持管理の重要性が高まり,近接目視による定期点検等で構成される維持管理の体系が整備,運用されている。しかし,道路トンネルの定期点検では,高所作業車を使用するために交通規制が生じることや,狭隘で暗い条件下で点検作業の結果,点検者によるバラつきや見落としが生じ得ることが問題となっている。これらを解決するために,技術開発者らは,産官学連携「新都市社会技術融合創造研究会」に参加し,MMS(Mobile Mapping System)とMIS(Mobile Imaging System)を搭載した走行型トンネル点検車「MIMM(ミーム)」を開発した。一方で,覆工コンクリート背面の空洞調査のニーズが高まるなか,従来の接触型レーダー探査を使用する際の交通規制の必要性が課題として残っていた。また,最近のCIM(Construction Information Modeling)導入の流れの中で,トンネルも含めた道路全体の3次元形状計測に対するニーズが高まりつつある。これらに対して,MIMM2号機をベースに,走行しながら空洞探査が可能な非接触型レーダーを搭載し,汎用型のMMSを搭載したのが本技術である。

2.技術の内容

MIMM-Rには,車両一台に3つの計測機能が搭載されている。第1に,道路周辺とトンネル覆工の3次元形状データを点群として取得するために,車両の前頭部にレーザースキャナーとカメラ,後部に全周回転型レーザースキャナーを搭載している。特に後部レーザースキャナーは,トンネル覆工の形状寸法を高精度で計測するために,世界最高水準(100万点/秒)の高密度レーザーを採用した。第2に,トンネル覆工表面のひび割れ等,変状を連続的に撮影するために車両全周方向に20台のビデオカメラ(38万画素)を配置している。第3に,覆工コンクリートの背面の状態を探査するために,車両天板に非接触型レーダーを搭載している。これらの機能を用いて,50〜70km/h程度で走行しながら,各情報を取得することが可能である。また,取得した3次元点群データは,搭載するGPS及びIMU(慣性計測装置)と連動しており,衛星不可視のトンネル内も含めて,世界座標系での座標定義が可能である。

3.技術の効果

計測結果のうち,画像計測を用いた覆工表面のひび割れ調査では,70km/h走行で0.2mmのひび割れが計測可能であり,定期点検時に確認されなかったひび割れや,スケッチによる損傷図における位置のずれを正しく把握することができた。また,画像計測による覆工表面のひび割れ分布と,レーザー形状計測による変形モードを組み合わせることによって,対象とするひび割れが背面土圧のような外的要因による進行性のものか,竣工直後の収縮による進行しないものかを推定することができた。非接触レーダーでは,従来の接触型レーダーとの比較,コア抜きとの検証の結果,適用性が確認できた。コスト面の評価は,経済性では従来技術に対して20%,作業日数で60%の向上を確認した(NETIS:KK-130026-A)。これらの高精度かつ漏れの無い調査を,交通規制することなく迅速に行えたことから,点検の効率化と確実性の向上に効果があったといえる。

4.技術の適用範囲

  • 道路,鉄道トンネルの調査(形状計測,画像計測,覆工背面の空洞探査)(鉄道では、計測器部を台車に搭載)
  • 道路及び周辺の地形測量

5.技術の適用実績

国道163号清滝トンネル点検業務,平成23年1月〜平成23年3月   他125件

写真・図・表

  • 写真−1 車両側面(MIMM-R)
  • 写真−2 車両上面(MIMM-R)
  • 写真−3 画像計測による覆工面のひび割れ検出例
  • 図−1 レーザー計測による覆工面形状
  • 図−2 非接触型レーダーによる覆工背面の
  • 図−3 接触レーダーと非接触レーダーの比較