JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第15回国土技術開発賞

入賞(選考委員会委員長表彰)

低改良率セメントコラム工法(ALiCC工法) (第15回国土技術開発賞 入賞)

ミッション低改良率セメントコラム工法(ALiCC工法)
応募技術名称低改良率セメントコラム工法(ALiCC工法)
応募者名(独)土木研究所
技術開発者〔国土技術政策総合研究所〕 小橋 秀俊/〔(株)三木地盤環境工学研究所〕 三木 博史/〔基礎地盤コンサルタンツ(株)〕 柳浦 良行/〔(株)不動テトラ〕 大林 淳/〔(株)キタック〕 大谷 政敬/〔(株)地圏環境テクノロジー〕 阪上 最一

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

 軟弱地盤対策において、セメントなどの改良材を用いた地盤改良の果たす役割が大きくなっている。従来から用いられている深層混合処理工法による軟弱地盤対策は、盛土の両サイドののり面下を集中的に改良する法尻ブロック形式が主体であった。これは円弧すべり安定計算からの結果に基づくものであり、盛土周辺への側方変形の抑制という観点から長い間主流となっていた。しかし、軟弱地盤が厚い場所の盛土造成等で大規模な地盤改良が必要となる等の問題があり、設計法の合理化が強く求められていた。

 このような背景から、共同研究に取組み、従来よりも面的に低い改良率(改良する面積率が10%〜30%程度)で盛土の安定や沈下抑制を図る「低改良率セメントコラム(ALiCC)工法」を開発した。

2.技術の内容

 ALiCC工法は、軟弱地盤上に盛土を構築する場合に発生する盛土材によるアーチ効果を見込むことによって、改良体が広い範囲の盛土荷重を分担支持できることを定量的に評価し、従来よりも低い改良率を実現すると同時に、盛土周辺部の側方変形や表層の不同沈下の抑制も期待できる設計法である。盛土下に全面的にくまなく改良杭を造成する工法であり、改良杭を支持基盤に着底させる「着底型」と、一定の沈下が許容される場合に着底せずに適用する「浮き型」の2つのタイプがある。また、ジオテキスタイル工法や浅層混合処理工法等を併用したより合理的な地盤改良もできる。

3.技術の効果

 ALiCC工法の効果を確認するため、有明沿岸道路(国交省 九州地整管轄内)において試験施工を行った。厚さ10m程度の軟弱地盤上に、浮き型タイプ(浅層改良併用)を適用し、高さ8mの盛土を構築したものであり、年間の沈下量が10cm以下、改良柱体と無処理地盤との不同沈下量が5cm以下となるように設計した。その結果、以下の所見が得られた。

@無体策の箇所では総沈下量が120cmを超えており、法尻付近でも100cm程度の沈下が観測されたのに対して、ALiCC工法では30cm程度に収まった。

A層別の沈下量において、ALiCC工法では6cm程度と総沈下量の5分の1程度であるのに対して、無対策では84cmが同層内で発生しており、改良杭による深部への荷重伝達により表層の沈下や変形抑制に対する有効性が確認できた。

B沈下収束状況において、ALiCC工法ではどの層も盛土完成直後にほぼ一定の値となっているのに対して、無対策では盛土完成後の残留沈下量が10cm程度みられ、残留沈下の低減にも有効であることが確認された。

4.技術の適用範囲

対象とする土構造物:主に道路盛土

基本仕様:設計基準強度(quck)=600〜1500kN/u、改良体直径(d)=600〜1300o
      改良体間隔(λ)=1000〜2800o、改良率(ap)=10〜30%

5.技術の適用実績

  • 一日市地区他築堤工事、国土交通省 豊岡河川国道事務所、平成20年9月〜平成22年5月
  • 米原BP工事多良南地区道路改良工事、国土交通省 滋賀国道事務所、平成22年1月〜平成22年2月
  • 22国補地道第22-03-871-0-001号 地盤改良工事(1工区)外2件、茨城県、平成22年9月〜平成23年5月 他27件

写真・図・表