JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第4回国土技術開発賞

最優秀賞(国土交通大臣表彰)

ゼロスペース工法 (第4回国土技術開発賞 最優秀賞)

応募技術名称ゼロスペース工法
副題開削工事における道路上掘削幅縮小技術
応募者名(株)関電工
技術開発者(株)関電工 井口 昌之
       星 信男

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

現状の開削ボックスカルバート工事では、掘削幅が構造物の幅よりも大きく、作業範囲が広く、必要以上に舗装材料、掘削発生土、埋戻し土等が増大する。道路上工事の場合、工事も複雑化し工事期間も長期化することから、近接住居に対する騒音・振動、作業帯による交通渋滞および渋滞時に発生する排気ガスが増加する。これらの問題を少しでも抑制させるため、現場打ちボックスカルバートの構築に必要な掘削幅を最小化することで自然環境および社会環境に与える影響を抑制可能な施工方法を開発した(図-1)。

  • 開発のコンセプト及び道路環境との調和
    図-1 開発のコンセプト及び道路環境との調和
  • 開発のコンセプト及び道路環境との調和

2.技術の内容

ゼロスペース工法は、土留め壁内側の土を掘削した後、本体の一部として機能し外型枠の役目を有する水密性かつ非腐食性パネル(以下、ゼロスペースボードと呼ぶ)を土留め壁に近接して建込む。引続き内側に内型枠を設けてコンクリートを打設し、コンクリートとゼロスペースボードとを地中に一体化させておき、埋戻し後、土留め壁を引抜く工法であり余掘りをゼロに近くし、土留め等の仮設材料を地中に残さず、開削幅、更には作業範囲を縮小して施工可能となる(図-2)。開発にあたっては、ゼロスペースボードの材料特性および土留め壁引抜き力、土留め壁引抜き時のボックスカルバートの健全性を室内実験、遠心模型実験、実規模実験と段階的に検証し実用化工法として具体化した。

従来工法とゼロスペース工法の形状比較
図-2 従来工法とゼロスペース工法の形状比較

3.技術の効果

  1. 路上工事規制範囲が30%縮小により円滑な交通流の確保など周辺環境への影響抑制
    (図-3 建設廃棄物、建設材料の減量効果をダンプトラック台数に換算した結果)
    • 建設廃棄物(舗装壊し31%減、処理量31%減、掘削土量33%減、残土処理量33%減)
    • 建設材料(埋戻し用砂46%減、底盤改良35%減)
  2. 施工の工夫により仮設材料(鋼矢板、木材)撤去可能
  3. 従来の鋼矢板引抜き力の維持と構造物の品質確保(摩擦低減効果のあるボードの開発)
  4. ゼロスペースボード重量が従来の合板型枠重量の1/4となることで施工性向上
  5. ボックスカルバート工事の建設コスト低減 (15〜20%)と工期の短縮(10〜15%)

工事関係車両の減量効果
図-3 工事関係車両の減量効果

4.技術の適用範囲等

ゼロスペース工法は、掘削幅が推進施工用設備設置スペースで決まる等の場合を除いた、ボックスカルバート幅と外型枠設置・撤去のための作業用スペースとなる余掘り幅で決定される工事で、土留め壁が必要でありかつ、土留め壁を引抜いた方がコスト上有利である土留め設計の考え方に合致した工事においての適用が効果的となる。


  • 写真1 実規模実験状況
    (掘削幅比較)


  • 写真2 ゼロスペースボード
    設置状況


  • 写真3 構築完了
     

5.技術の適用実績

厚木変電所設備更新管路新設工事(1998年5月〜1999年8月) 他68件