JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第7回国土技術開発賞

優秀賞(国土交通大臣表彰)

吊り免振工法 (第7回国土技術開発賞 優秀賞)

応募技術名称吊り免振工法
副題静かで快適な高架下空間を実現する技術
応募者名東日本旅客鉄道(株)
(株)竹中工務店
技術開発者(東日本旅客鉄道(株) 大迫勝彦
(株)竹中工務店    深尾康三

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

鉄道事業者の事業拡大において、周辺が一等地の高架下「ストック」が遊休地であることは「もったいない」の一言に尽きる。しかし、これまでの駅周辺の高架下は、利便性の高い立地でありながら振動や騒音が大きいと共に、狭隘敷地等の問題を抱えるため、駐車場や駐輪場、倉庫、飲食店等の利用に限られていた。一方、本開発を始めた1997年頃の都市部は、道路渋滞の緩和などを目的とした鉄道の立体交差化事業が増加しており、新たな高架下ストックの有効活用を考える必要があった。これらを背景に、高架下にホテルや集合住宅などを実現する付加価値の高い技術として、吊り免振工法の開発に着手した。

2.技術の内容

本工法は、既存高架橋の基礎上に新設した鉄骨支柱から上下に防振ゴムを挟み込んだ鋼棒を利用して、建物全体を高架橋から吊ることで列車から建物に伝搬する振動を約1/35に低減し、固体伝搬音(建築物に伝搬した振動により発生する音)の発生を抑える。また、長周期化した吊り建物は高架橋の固有振動と殆ど連成しないため、高架橋に動的な付加水平力も与えない。高架橋基礎と建物はオイルダンパーで接続し、相対変位を制御することで再現期間500年相当の極稀な地震などでもお互いが衝突しない。通常、列車振動対策に有効な防振ゴムは、水平方向の耐力が低いため単独で建物支承に利用することが難しいため、免震構造と組み合わせることで地震応答を低減し、防振ゴムの耐震安全性を確保したことが大きなポイントである。

吊り免振工法の特徴
図−1 吊り免振工法の特徴

吊り免振工法の特徴
表−1 技術の性能比較表

  • 高架下ホテルの外観
    写真−1 高架下ホテルの外観(南面)
  • ホテル客室
    写真−2 ホテル客室(トリプルルーム)

3.技術の効果

本工法を採用した高架下建物は、列車の通過を殆ど感じさせないホテルや集合住宅に相応しい室内環境性能と、高架橋の耐震性に影響を及ぼさない免震性能を実現する。また、高架橋基礎の余力を活用することで建物基礎を省略または簡略化できるため、従来の防音防振建物に比べ建物の延べ面積当たり最大10万円/坪程度のコスト縮減効果が期待できる。地価が比較的高い駅周辺の土地に建てられる一般的なホテルや集合住宅と比べた場合においても、土地代などを含む総事業費としては十分なコスト優位性がある。一方、大きな間接的効果としては、適用実績のホテルをきっかけに高架下空間の高付加価値利用が促進され、土地の有効利用や都市再生に繋がることが期待される。

4.技術の適用範囲等

  1. 建物の常時(長期)荷重を支持する余力がある既存及び新設高架橋
    (余力が不足する場合は杭・基礎工事が発生しコスト縮減効果が減少)
  2. 一般的な振動騒音レベルの鉄道高架下
    (通常はありえないが100dBを超えるような厳しい振動騒音条件下では追加の騒音振動対策が必要)

5.技術の適用実績

ホテルドリームゲート舞浜新築工事、平成16年2月〜 他0件(現在企画検討中)