受賞技術概要
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第7回国土技術開発賞
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- 第7回国土技術開発賞
最優秀賞(国土交通大臣表彰)
伝統構法による大規模木造天守の復元技術 (第7回国土技術開発賞 最優秀賞)
応募技術名称 | 伝統構法による大規模木造天守の復元技術 |
副題 | 大洲城天守の復元 |
応募者名 | (株)間組 外舘 寛 松浦恒久 (株)三宿工房 冨士川俊輔 弥永 努 (有)建築文化研究所 八木清勝 林舎建築研究所(有) 木岡敬雄 (株)前川建築研究室 前川 康 (株)増田建築構造事務所 増田一眞 山田憲明 |
技術開発者 | (株)三宿工房 (有)建築文化研究所 林舎建築研究所(有) (株)前川建築研究室 (株)増田建築構造事務所 |
技術の概要
1.技術開発の背景及び契機
地域、地方の伝統文化を核にした地域活性化の機運のもと、史料、史実に基づいた城郭建造物の本格的復元事業が数多く構想、計画されている。なかでも、高層の木造天守の本格的な復元のためには、解明が置き去りにされてきた伝統構法の原理を明らかにし、設計法を確立することが必要となった。
2.技術の内容
在来工法では、建築基準法(S25)及び同法施行令で規定された工法で、筋違を用いる事により、柱は鉛直耐力のみを負担し、水平耐力は筋違を入れた耐力壁に頼る構造方式であるが、伝統構法は、木造構造の各部位に応力を分散して負担させる総持構造を特色としており、貫構造の柱−梁接合部(仕口部)や土壁など多くの部材の働きの組合せで建物を成立させている。
今回開発した設計法では、伝統構法における代表的構造要素である、土壁および、貫構造による柱?梁接合部(仕口部)の構造モデルを開発し、柱に曲げを負担させる木造構造の解析が可能となり(図−1)。さらに、土壁せん断実験、仕口部の構造性能実験により、土壁のせん断強度や仕口部の回転剛性の確認を行い、柱、梁、土壁、等を含む総持構造による伝統構法の設計手法を確立した(写真−1)。
それらの検討に基づき、建築基準法に規定されていない伝統構法による建物の復元に関し、関係諸機関の協力のもと、構造、防災面の安全性についての検討、協議を重ねた結果、戦後の本格的木造天守の復元として最大の高さ19.15mを誇る大洲城の復元を伝統構法により実現した(写真−2、写真−3)。
図−1 伝統構法の構造モデル
写真−1 柱−梁接合部構造実験
写真−2、3 大洲城外観・内観
3.技術の効果
- 大洲城天守復元を核に大洲市街の町並み整備を行い、大洲市を訪れる観光客数の増大に寄与した。また、復元事業が愛媛県全体のPR活動にも活用されるなど、歴史、文化の伝承を基盤にした地域再生に貢献した(図−2)。
- 木造建物における伝統構法を支える大工技術の継承に貢献した。
- 伝統構法により建設された現存の木造建物(歴史的建造物等)の構造安全性の検証を可能にしたことで、その修理、補強の必要性判断が合理的に行えるようになる。
図−2 大洲城復元による観光客の増大
4.技術の適用範囲等
- 歴史的建造物の復元事業など、伝統構法を用いた建造物の忠実な復元
- 現存する伝統構法を用いて建築された木造の歴史的建造物、文化財等の耐震性能の評価
5.技術の適用実績
大洲城復元工事 平成13年6月〜平成16年7月
白石城復元工事 平成 4年9月〜平成7年3月