JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第16回国土技術開発賞

優秀賞(国土交通大臣表彰)

斜め土留め工法 (第16回国土技術開発賞 優秀賞)

応募技術名称斜め土留め工法
副題深い開削工事に適用可能な自立式土留め工法
応募者名(株)大林組
技術開発者〔(株)大林組〕嶋田 洋一・前田 知就

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

従来、開削工事に用いられる仮設の土留め工法は、鉛直に土留め壁を構築し、掘削深さが3〜4m程度より深くなると、切梁や中間杭といった支保工を用いて土留め壁の安定性を確保するのが一般的であった(図-1)。しかしながら、支保工は内部に構築する本設構造物と干渉することから、底版の貫通部や壁の打継目が増し、地下構造物の長期耐久性に影響を及ぼしていた。また、深い開削工事では、支保工の架設・撤去に係わる工費、工期が、工事全体の工費、工期へ与える影響も大きく、構造物の品質向上および施工効率化のために支保工の削減や省略が求められていた。

本設構造物の擁壁では、もたれ擁壁構造が古くから用いられており、擁壁を傾斜させることで支保工を省略した自立形式の土留め構造が成立することが認められていた。しかし、仮設構造物の土留めでは、傾斜した土留めの設計法が確立されていないことや、施工法が十分に検討されていなかったこともあり、仮設の土留め壁を傾斜して用いることはなかった。そこで、仮設の土留め壁を傾斜した場合の有効性に着目し、新たに設計法と施工法の検討を行い、深い開削工事においても適用可能な自立形式の土留め工法技術「斜め土留め工法」の開発に至った(図-2)。

2.技術の内容

斜め土留め工法は、従来、鉛直に構築されてきた仮設土留め壁を傾斜させることにより、土留め壁に作用する土圧を低減し、深い開削工事で必要とされる切梁・中間杭やグラウンドアンカーなどの支保工を省略した自立形式の土留め工法である。

本工法は、親杭横矢板や鋼矢板など従来工法・材料を用いた様々な構造形式での施工が可能な汎用性の高い工法である。本工法の適用により、支保工が無いオープンな開削地下空間が確保され、掘削時および構造物構築時の施工性を向上し、工費・工期を縮減することができる。

3.技術の効果

斜め土留め工法は、従来の土留め工法(例えば、切梁式土留め工法)に比べ、以下の効果がある。

【構造物の品質向上】 切梁支保工の省略により、構造物の水平打継目が少なくでき、中間杭の省略により、止水処理の必要な構造物貫通部がなくなることで、構造物の長寿命化に貢献できる。

【工期短縮】 支保工の省略により、支保工架設・撤去にかかる工程に加えて、掘削や構造物構築にかかる工程を削減できるため、20〜35%の工期短縮を図れる。

【コスト縮減】 支保工の省略により、支保工材料、架設、撤去にかかるコストが縮減され、 7〜20%コスト縮減できる。

【施工性向上】 支保工の省略により、オープンな地下空間を確保できるため、掘削および構造物構築の施工性が向上する。

【環境負荷の低減】 施工性の向上により、工事によって発生するCO2を削減できる。

4.技術の適用範囲

  • 鋼矢板方式・親杭横矢板方式の斜め土留め:掘削深さ12mまでの開削工事
  • ソイルセメント壁方式の斜め土留め:掘削深さ15mまでの開削工事

5.技術の適用実績

東関東自動車道 谷津船橋インターチェンジ工事、平成23年6月〜平成25年5月
他4件(写真-1〜5)

写真・図・表

  • 図−1 鉛直土留め(従来工法)
  • 図−2 斜め土留め

写真−1 掘削完了全景(常陸那珂火力発電所)

  • 写真−2 掘削完了全景(谷津船橋インターチェンジ)
  • 写真−3 掘削完了全景(成田国際空港)
  • 写真−4 施工状況(親杭)
  • 写真−5 施工状況(鋼矢板)