JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第2回建設技術開発賞

奨励賞(JICE理事長表彰)

制震ブレースを用いた耐震補強システム (第2回建設技術開発賞 奨励賞)

ミッション国民の生命や財産を守るために必要となる防災やリダンダンシー確保に寄与する
応募技術名称制震ブレースを用いた耐震補強システム
副題摩擦ダンパー付き外付けブレースによる既存建物の耐震補強工法
応募者名株式会社青木建設
日本大学 安達 洋

技術の概要

1.開発の背景と目的

 耐震補強が必要な既存不適格建物の数は膨大であるにも拘わらず、補強工事はまだ僅かしか進んでいない状況にある。コスト的な問題のほか、工事中にも建物を使用できる補強方法(居ながら補強)が開発・普及されていないことが、その原因の一つである。このような背景のもと、補強の必要性が高い中低層の既存鉄筋コンクリート(RC)造建物を対象として、建物を継続使用したままで補強工事が可能な制震補強工法を実用化することを目的に、研究・開発に取り組んだ。

2.技術の内容

 本制震補強工法は、建物の外壁面に制震ブレース(鋼管ブレースの軸芯に摩擦ダンパーを組み込んだブレース)を取付け、地震時に建物が揺れるエネルギーを吸収することで、既存建物の耐震性能を居ながら補強で向上させる補強工法(写真-1,写真-2)である。技術的な特長は、僅かな変形から効率よく地震エネルギーを吸収する摩擦ダンパー(図-1,図-2)を開発し、ブレースの軸芯に組み込むことにより、制震ブレースの強度と剛性を各々独立に設定できるようにしたことである。この方法を開発することにより、変形性能が乏しい既存RC造建物の補強設計(応答制御)を容易にし、かつ、ブレース取付部分の性能も飛躍的に向上させた。また、実用的な制震補強設計方法として、通常の耐震診断と同じ尺度(IS指標)により制震補強効果を評価する方法を開発し、診断結果から直接、補強概算検討を行えるようにした。

3.技術の効果

 地震エネルギーを効率よく吸収し確実に耐震補強効果が得られ、建物を継続使用したままで補強工事(居ながら補強)が可能である。また、制震ブレースの取付けが簡単で、サッシュや内外装材の解体・復旧が不要なため、従来工法に比べ補強工事期間、補強工事費が2〜3割低減できる。従来工法の時には必要であった補強箇所の室内備品の移動や、移転先の確保が不要なので、補強事業費は大幅に削減される。しかも、廃材や騒音が少ない環境にやさしい補強工法である。

4.技術の適用範囲等

1)既存建築構造物の耐震補強

主として5〜6階程度までの中低層鉄筋コンクリート造建物の耐震補強。
なお、11階程度までの高層鉄骨鉄筋コンクリート造建物の補強にも適用可能。
建学校、病院、事務所、共同住宅等、建物用途は問わない。
ラーメン構造、有壁ラーメン構造等、構造形式は問わない。

2)適用実績
  羽生市立南中学校校舎1号館棟耐震補強工事 他3件