JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第2回建設技術開発賞

優秀賞(建設大臣表彰)

DSQフレームシステム (第2回建設技術開発賞 優秀賞)

ミッション施工性の向上等により工期を短縮する
応募技術名称DSQフレームシステム
副題増厚鋼管柱とワンサイドボルトを用いた鉄骨躯体システム
応募者名大和ハウス工業株式会社

技術の概要

1.開発の背景と目的

 角形鋼管柱とH形鋼梁を用いた建築鉄骨の柱梁接合部は、柱を一旦切断してダイアフラムを挟み、再び溶接する工法が一般的に取られている。鉄骨製作上、最も時間と手間を必要とし、また、構造的には最も重要な部位でありながら、溶接不良などの問題の発生しやすい箇所である。阪神淡路大震災では、溶接部の破断により大きな被害に至った鉄骨建築が多くあり、また、将来的には熟練溶接工の不足・技能低下の問題も抱えている。

 DSQフレームは、このダイアフラムを省略して、鉄骨製作工程の簡素化・単純化を図り、また、極力溶接部を排除して構造上の弱点をなくし、構造体としての品質と安全性を確保することを目的に開発された一般建築向けの鉄骨躯体システムである。

2.技術の内容

 DSQフレームは、図−1に示すように、梁との接合部とその近傍を増厚加工された角形鋼管柱と、端部にエンドプレートを取付けたH形鋼の梁を、閉鎖型断面にも締め付け施工できるトルシア形高力ワンサイドボルト(写真−1)で接合するのが特徴である。

 増厚加工とは、高周波誘導加熱装置により鋼管を管周方向に線状加熱し、ジャッキにより管軸方向に圧縮し、所定の厚さに増厚するもので、加熱装置を移動することにより所定の長さにわたって鋼管を増厚する加工法である(図−2)。DSQでは、増厚部を元の鋼管の2倍程度に増厚し(写真−2)、ダイアフラムを省略している。また、再熱処理により増厚部の機械的性質は元の鋼管より大幅に改善されている(図−3)。

3.技術の効果

  • 柱は基本的に一本ものの通し柱で、梁との接合部で柱を切断・溶接しないため、溶接部での脆性破壊の恐れがなく、信頼性の高い構造躯体が得られる(図−4)。
  • 接合部にダイアフラムがないため、梁せいの違いや梁の段差に容易に対応できる。
  • 工場での鉄骨部材製作工程が簡素化され、品質確保・製作期間短縮につながる(図−5)。
  • 柱からブラケットが出ていないため、車両運搬効率が高く、現場での集積も容易。
  • 現場での締めつけボルト本数が従来工法より少なく、建方がスムーズに行える(写真−3)。

4.技術の適用範囲等

中低層規模の建築鉄骨を対象とし、現在、適用できる部材は以下の通り。

  • 柱:角形鋼管(□-200_9〜□-400_22)
  • 本システムは、シールド工事のセグメントに限らず多種類の資機材を管理・ストックする場合や、複数の車輌を管理する場合などにも展開できる。
  • 梁:H形鋼(細幅H-200_100〜H-600_200)

また、3階建て住宅「ルミネックス3」の鉄骨躯体にDRF構法として採用している。

  • 適用実績 全日空ビルディング独身寮新築工事 他34件