受賞技術概要
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第3回国土技術開発賞
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- 第3回国土技術開発賞
入賞(選考委員会委員長表彰)
入賞: SR-CF工法 (第3回国土技術開発賞 入賞)
ミッション | 工事中又は供用後の施設が発生する騒音、振動、水質汚濁などの周辺環境に与える外部不経済の軽減やその評価 |
応募技術名称 | SR-CF工法 |
副題 | 炭素繊維シートとCFアンカーによる既存建築物の耐震改修工法 |
応募者名 | 清水建設(株) 鹿島建設(株) (株)コンステック ショーボンド建設(株) 新日本製鐵(株) 大成建設(株) (株)東邦アーステック 東レ(株) 日鉄コンポジット(株) 三菱化学産資(株) |
技術開発者 | 清水建設(株) 塚越英夫 齋藤秀人 神野靖夫 池谷純一 鹿島建設(株) 渡辺茂雄 (株)コンステック 伊藤功一 ショーボンド建設(株) 持田政次 新日本製鐵(株) 大矢俊樹 大成建設(株) 渡辺英義 (株)東邦アーステック 樋口哲郎 東レ(株) 宇仁眞二郎 日鉄コンポジット(株) 杉山哲也 三菱化学産資(株) 加藤貴久 |
技術の概要
1.技術開発の背景と目的
阪神・淡路大震災以降、既存鉄筋コンクリート造構造物の耐震性能の向上が急がれている。その手段としては、経済的な制約、施設の機能を停止せず維持する必要性、建設廃材削減といった観点から、構造物を解体・新築するのではなく補強により耐震性能を向上させて継続使用することが多い。耐震補強は構造物を使用しながら工事を行うことが多いため、工事中の騒音・粉塵等が少なく、短期間で施工できる補強工法が必要とされていた。
2.技術の内容
炭素繊維シート補強工法は鉄筋コンクリートの部材にエポキシ樹脂を用いて炭素繊維シートを貼り付けて、鉄筋コンクリート部材の耐力や靱性を向上させる技術である。従来この工法は壁などが付帯しない独立柱のみを適用対象としていた。これに対してSR−CF工法ではCFアンカーという独創的な技術を開発することにより、これまで耐震補強が困難であった壁付き柱、梁、壁なども、炭素繊維シートによる簡易な工事で耐震補強することを可能にした(図1)。その結果、本工法により耐震部材全て(独立柱、壁付き柱、梁、壁)の補強が可能になった。
SR-CF工法ではCFアンカーを用いることにより、建物の全ての耐震部材(柱、梁、壁)を炭素繊維シートによって補強することが可能である。
CFアンカーは炭素繊維を束ねたもので、袖壁付き柱や梁の補強においては障害物によって分断された炭素繊維シート同士を繋ぐ役割を果たし、壁や梁の補強においては炭素繊維シートの端部をコンクリートの定着する役割を果たす。
3.技術の効果
壁付き柱(写真1、2)や梁(写真3)のせん断補強では、CFアンカーを用いることにより、袖壁やスラブを斫ることなく簡易な工事で補強を行うことができるようになった。また、従来炭素繊維シートでは補強できなかった壁も、CFアンカーを用いることで補強できるようになった。全ての耐震部材を本工法で補強できるようになったことから、建物の補強工事全体を通して低騒音が実現し、建物を使用しながらの耐震補強が可能となった。また、従来工法に比べて、躯体補強工事について約20%の工期短縮及び約30%のコスト削減が可能となった。補強の効果は多くの構造実験により検証され、信頼性の高い性能評価方法が確立されている。
袖壁付き柱の補強では、柱面にコの字型に炭素繊維シートを貼り付ける。袖壁に貫通孔をあけ、その孔にCFアンカーを通し、端部を扇状に広げて炭素繊維シートに接着する。こうすることで、柱に炭素繊維シートが閉鎖型に巻き付けられたのと同じ状態になる。
写真は窓枠が接している柱の補強を行った例で、柱と窓枠の隙間にCFアンカーを貫通させることで、窓枠の撤去・復旧をすることなく柱を補強している。写真1(上)はCFアンカーを貫通孔に通している状況、写真2(下)は通したCFアンカーの両端部を扇状に広げて炭素繊維シートに接着し終えた状況である。
4.技術の適用範囲等
- SR−CF工法では、鉄筋コンクリート造建物あるいは鉄骨鉄筋コンクリート造建物の、全ての耐震部材(独立柱、壁付き柱、梁、壁)の補強が可能である。
- 適用実績 女子美術大学2号館改修工事 他約30件