JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第3回国土技術開発賞

入賞(選考委員会委員長表彰)

ビックリート (第3回国土技術開発賞 入賞)

ミッション防菌コンクリート
応募技術名称ビックリート
副題防菌コンクリート
応募者名(株)間組
日本ヒューム(株)
技術開発者(株)間組     前田照信
          根岸敦規
日本ヒューム(株) 石井義章
          井川秀樹
共同開発者日本下水道事業団

技術の概要

1.技術開発の背景と目的

 下水道施設のコンクリート構造物は、中性化、塩害等により劣化するが、近年、硫酸によるコンクリートの腐食が問題となっており、この劣化には硫黄酸化細菌が関与していることが知られている。本技術は、硫黄酸化細菌の活動を阻害する防菌剤(写真−1)をコンクリート中に均一に練り込んだもので、硫黄酸化細菌の活動を阻害してコンクリート表面での硫酸生成を抑制する防食材料を提供することを開発の目的とした。

2.技術の内容

 下水道施設内で発生する硫化水素は、硫黄酸化細菌によって硫酸に酸化され、コンクリートを著しく腐食させる(図−1)。施工直後のコンクリート表面は、pH=12〜13の強アルカリであるため硫黄酸化細菌は生育できないが、二酸化炭素によりコンクリートの中性化(炭酸化)が進行すると、硫黄酸化細菌が活動(図−2)し、硫化水素を硫酸に変化させる。硫酸は、コンクリート中のセメント成分と反応し、エトリンガイトという膨張性の鉱物を生じ、更に生成された硫酸により、エトリンガイトは二水石膏に変化する(図−3)。

 ビックリートは、ニッケルとタングステンを主成分とした防菌剤をコンクリート中に微量添加することにより、コンクリート表面の硫黄酸化細菌の活性を抑止し、腐食の直接の原因となる硫酸の生成を抑制する新しいコンクリート防食技術(写真−2)である。

3.技術の効果

 従来技術では、一般的に硫化水素によるコンクリートの腐食対策として樹脂コーティングを施すが、施工上の問題や高価である事、耐用年数が比較的短いなどの問題があった。

 ビックリートは、防菌剤がコンクリート中に均一に分散されており、コンクリート全体が硫黄酸化細菌に対する防食性能を有するため、樹脂コーティングに比べて施工上の問題が無く、耐久性が高く、経済的であり、維持管理上からも効果的である。

 新設構造物へ適用した場合、コンクリート防食指針(案)におけるC種のライニング材の約6割のコストで施工することが可能である。

4.技術の適用範囲等

 既設トンネルの適用に関しては制約なし。特に、以下の事例では有効である。

  1. 下水道施設に用いられる全てのコンクリートに適用できる。
  2. 下水道施設内に発生する平均硫化水素濃度が5ppm以下でコンクリートの標準的な耐用年数を確保できる。
  3. 平均硫化水素濃度が50ppm以下で従来のコンクリートに対し腐食の進行が4分の1程度とすることができる。
  4. 適用実績 妻沼1号幹線管渠築造工事 他約2000件