JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第11回国土技術開発賞

最優秀賞(国土交通大臣表彰)

鹿島カットアンドダウン工法 (第11回国土技術開発賞 最優秀賞)

応募技術名称鹿島カットアンドダウン工法
副題高層ビルの新しい解体工法の開発
応募者名鹿島カットアンドダウン工法
技術開発者〔鹿島建設(株)〕大塚 繁充・小林 実

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

2007年4月、弊社旧本社ビル解体計画が出件し、新しい解体工法の開発に着手した。

2.技術の内容

高層ビル解体に際し、従来では上階から下階に向けて解体していたが、本工法は、いわゆる「だるま落とし」のように、ビルの下階から各階を順次解体するもので、地上付近だけで解体作業を行う。  そのためには、下階の柱直下にジャッキを設置する必要がある。その際に柱を切断しなければならず、建物の耐震性を著しく低下させることになる。解体工事中でも元の建物と同等の耐震安全性を保つために、建物内部に鉄筋コンクリート造の壁「コアウォール」を新たに構築し、地震や風により生じる建物への水平力を、鉄骨製の「荷重伝達フレーム」を介して伝達させる方式を開発した。

3.技術の効果

本工法は、上階から解体する従来の解体工法と比較し、下記のメリットがある。

  1. 地上付近での解体作業の為、低騒音で 粉塵の飛散が少ない。
  2. リサイクル率の向上:従来の工法では、雨水や粉塵の飛散を防ぐための散水が下階に流れ落ちて、内装材の分別収集を困難にしていたが、本工法では内装解体階をドライな状態に保つことができ、解体材の分別収集が可能である。また、リサイクル工場の廃材受け入れ可能量の範囲内で、一定量の廃材を一定サイクルで搬出できるため、高いリサイクル率を達成できる。内装材のリサイクル率は従来工法で50%程度のところを93%に、スクラップ、コンクリートガラを含めたリサイクル率は99%を達成した。
  3. 仮設サポート・足場が不要:上階で作業する重機を含む床を支えるサポートや、粉塵・騒音の飛散を防ぐための全面足場が不要となり、低層部の仮囲いのみで工事が可能となる。
  4. 効率的な作業:上階で解体した内装材、アスベスト廃材を解体階にそのまま存置し、ジャッキダウンに伴って地上近くに下りてきてから廃材を搬出できる。一方、躯体は地上付近で解体するため、物と人の輸送を最小限とし、一定サイクルでの効率的な作業が可能となる。

4.技術の適用範囲等

本工法の適用対象建物は、20階建て程度の鉄骨造ラーメン構造であるが、技術的には更に規模の大きな建物にも適用可能と考えている。

5.技術の適用実績

鹿島建設(株) 既存本社ビル1棟・2棟・3棟解体工事、平成19年11月〜平成20年9月

写真・図・表

写真1-鹿島旧本社ビル解体状況

図1-コアウォールと荷重伝達フレーム・図2-ジャッキダウン手順