JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第12回国土技術開発賞

最優秀賞(国土交通大臣表彰)

ベル工法 (第12回国土技術開発賞 最優秀賞)

応募技術名称ベル工法
副題塩化ビニル管を用いた小口径・長距離・曲線推進工法
応募者名(株)エム・シー・エル・コーポレーション/川崎重工業(株)
技術開発者〔(株)エム・シー・エル・コーポレーション〕野沢有/〔川崎重工業(株)〕飯原明彦

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

地下に埋設する小口径の下水道管渠は、下水から発生する硫酸などに対する耐腐食性、施工性等から塩ビ管が多く用いられてきた。しかし、下水道管渠構築に用いる推進工事においては、長距離・曲線を施工するための大きな推進力が必要となるため、小口径から大口径に至るまで耐荷力に優れたコンクリート管が用いられ、下水から発生する硫酸に対する腐食に弱いというコンクリート管の欠点は解決されていなかった。

本技術は、小口径の下水道管渠として耐腐食性に優れた塩ビ管を用いて、長距離・曲線の推進工法を可能としたものであり、近い将来に発生する管補修・管更生工事費を抑制し、社会資本の充実と環境への負荷低減に、大きく貢献するものである。

2.技術の内容

推進工法は元押しジャッキで推進管を押していくため、推進延長とともに推進管と地山との摩擦で推力が上昇する。塩化ビニル推進管はコンクリート推進管と比較して、同じ管径では20%〜 35%程度の耐荷力しかなく、長距離(90 m以上)を推進することは不可能であった。

本工法では、元押しジャッキからの推力を伝達するインナー支持装置で塩化ビニル推進管を支持する方法とした(図−2)。インナー支持装置は、近傍の周辺摩擦力が塩化ビニル管の許容耐荷力を下回るような間隔で設置する。この方式を用いれば、推進延長は推進管の耐荷力で制限されるのではなく、インナー支持装置の耐荷力で決定されることとなり、長距離を推進できることになった。また、インナー装置をピン構造として曲線にも対応させ、塩化ビニル推進管を用いた小口径長距離・曲線推進工法を世界で初めて実現させた。なお、従来の塩ビ推進工法とベル工法との推進距離の対比表を表−1に示す。

3.技術の効果

直接効果:
  174 mの施工実績において、従来の塩ビ推進工法と比較して
  @工期:約30%短縮 A工費:約5%の削減 B立坑数:約50%削減
間接効果:
  @従来の塩ビ推進工法と比較して、立坑数の削減に伴う、交通渋滞・振動・騒音の低減
  Aコンクリート管推進工法と比較して、耐食性・耐震性が向上し、改築更新費を削減可能

4.技術の適用範囲

  • 工事対象:下水道、電力、ガス、水道等
  • 適応土質:砂質土、粘性土、礫質土、砂礫土、岩盤
  • 環境条件:深い土被り、並列埋設管での測量が可能

5.技術の適用実績

千葉北部地区平成20 年度21 住区排水工事

写真・図・表

図−1 塩ビ推進工法の概要

図−2 インナー支持装置

表−1 ベル工法と従来工法との推進距離の対比