JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第3回国土技術開発賞

最優秀賞(国土交通大臣表彰)

ウォークスルー型耐火スクリーン (第3回国土技術開発賞 優秀賞)

ミッション国民の生命や財産を守るために必要となる防災やリダンダンシー確保に寄与する
応募技術名称ウォークスルー型耐火スクリーン
応募者名(株)大林組
技術開発者(株)大林組 宮川保之、村岡 宏、本間正彦

技術の概要

1.技術開発の背景と目的

 鋼板製防火シャッターは現在、オフィスビルや大規模物販店舗における面積区画、竪穴区画として多用されているが、適用する開口が長い場合や避難経路を確保する場合はレールポストや併設扉が必要となり、日常時の使い勝手や建築空間のデザイン性が損なわれることが多かった。また、防火シャッターは重量があり、剛性も高いため、万一人間がはさまれた場合は重大な事故につながる可能性や、一旦降下すると内部の状況が一変するため避難方向を見失い、パニックにおちいる可能性もあった。このような背景から従来の防火シャッターに比べて格段の安全性を持ち、日常の通行障害となるレースポスト、防火扉が一切建築空間には現れない画期的な防火区画システムの開発を目的とした。

2.技術の内容

 スクリーンの素材としては耐火性に優れたシリカクロスを使用した。通常は天井裏空間の鋼製ボックス内に巻き取られて収納されているが、火災時には煙あるいは熱感知器連動で降下して防火区画を構成する。また、スクリーンの一部に避難のために人が通過できるL字型の切れ込みが入れられている。この部分はスクリーンドアと呼ばれ、蝶番により可動する下端の鋼製バーによって三角形の避難出口を形成する。(写真−1,図−1参照)

3.技術の効果

 耐火スクリーンは鋼板製防火シャッターの1/10程度の重量で、シート自体も柔軟性があるため、降下中にはさまれてもけがをする心配がない。シートの厚さは0.6mm程度でコンパクトに巻き取ることができ、防火シャッターでは取り付けられなかった狭い天井裏空間にも施工可能である。スクリーンドアは押すだけで開くため、車イスや高齢者、子供などの災害弱者も容易に避難できる。シートは約16%の透光性があり、スクリーンの反対側の状況(火炎の有無など)をある程度認識することができるため、避難時の安全性の確保のほか、消防活動時の利便性も高まる。さらに降下音の静かさや、見た目の素材のやわらかさ、軽量感は火災時における避難者のパニック防止上、大変効果的である。現在、鋼製シャッターより約2割コストが高いが、大量生産が可能となればさらにコストダウンが期待できる。

4.技術の適用範囲等

  1. 建築基準法で要求されているあらゆる種類の防火区画に適用可能
  2. 幅5〜6mのスクリーンの接合部をサブスクリーンで重ね合わせながら同調降下させることにより、どのような長さの開口幅に対してもレールポストなしで区画することが可能
  3. 高さ30m程度までの開口に適用可能
  4. 適用実績 横浜駅前地下街防災設備等改善工事 他多数