JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第3回国土技術開発賞

最優秀賞(国土交通大臣表彰)

浸透固化処理工法 (第3回国土技術開発賞 優秀賞)

ミッション国民の生命や財産を守るために必要となる防災やリダンダンシー確保に寄与する
応募技術名称浸透固化処理工法
副題蘇る下水道
応募者名五洋建設(株)
九州大学 善 功企
技術開発者五洋建設(株) 林健太郎
共同開発者(独)港湾空港技術研究所

技術の概要

1.技術開発の背景と目的

 これまで、多くの液状化対策工法が開発されてきたが、そのほとんどは新たに建設するさいに適用される対策技術であり、既存の施設に対して経済的・技術的に有効な方法は皆無であった。新世紀を迎え、新たな社会資本整備が抑制基調にあるなかで、既存施設の健全な維持・延命化をはかる上で、既設構造物直下地盤にも適用可能な『21世紀型の新しい液状化対策工法』が求められていた。このような背景から、液状化対策が必要な既存施設直下地盤に対して、経済的・合理的に対策が可能な新工法の開発を目的とした。

2.技術の内容

 浸透固化処理工法は、図−1に示す様に、時間がたつとゼリー状になる耐久性のある特殊溶液を既設構造物の直下地盤に浸透させ、地下水と置き換えることによって液状化の発生を防止する工法である。地盤内の地下水をゼリー状の物質で置き換えるため地震力による間隙水圧の上昇が抑制され液状化が発生しなくなる。また、地盤の固化による過剰な強度を付与する必要がないことなどによって経済性を高めている。この工法は小型の機械を使用し、地盤に対して自由な角度で注入できるため、護岸、滑走路、ビルなどの既設構造物の運用を休止することなく工事を進めることが可能な点も特徴の一つとなっている。

3.技術の効果

 締固工法などの従来の液状化対策技術は地表面に構造物等の施設が存在する場合には適用できなかった。唯一可能な方法として、斜めから施工できる薬液注入工法があるが、これまでの工法は、地盤を固化するという発想に基づくこと、改良直径が1m程度と小さいこと、施工コストが大きいことなどから、液状化対策に使われることはほとんど無かった。

 浸透固化処理工法は、浸透性の高い溶液を用いることで、一点からの浸透できる改良範囲が直径2〜4mと飛躍的に大きくなっている。この結果、従来の薬液注入工法に比べて、施工価格を半分程度にすることが可能になった。写真−1に松坂港で施工したさいに掘り出された直径2.5mの改良体の形状を示す。一点より浸透した溶液が放射状に広がり大きな球状の改良体が形成されているのが確認される。

4.技術の適用範囲等

  1. 既設の道路や滑走路直下地盤の液状化対策(図−2参照)
  2. 既設のビルや橋脚などの杭基礎の液状化被害の防止(図−3参照)
  3. 既設岸壁などの地震時土圧の低減、および波浪による吸出し被害の防止