受賞技術概要
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第4回国土技術開発賞
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- 第4回国土技術開発賞
優秀賞(国土交通大臣表彰)
近自然型海浜安定化工法 (第4回国土技術開発賞 優秀賞)
応募技術名称 | 近自然型海浜安定化工法 |
副題 | 透水層埋設による海浜安定化工法 |
応募者名 | (株)テトラ 日鐵建材工業(株) |
技術開発者 | (株)テトラ 原 隆 佐藤 勝弘 日鐵建材工業(株) 岩佐 直人 堀 謙吾 |
共同開発者 | 独立行政法人港湾空港技術研究所 国土交通省関東地方整備局 |
技術の概要
1.技術開発の背景及び契機
離岸堤、突堤のように海浜を囲み、侵食防止や人工海浜の安定化をはかる技術は、ほぼ完成している。しかしながら、この従来工法は砂浜の安定だけを考慮に入れていて人々が海浜に近づけない、景観が悪いなどの問題を抱えているため、高質な海浜を求める最近の社会のニーズに応えられなくなってきている。このために、砂浜を安定させて防災機能を有しつつ、さらに、親水性の機能も合せ持つ、新しい海岸保全技術の開発が強く望まれるようになってきた。
2.技術の内容
新しい海岸保全技術の開発を目指して、これまでに砂浜の侵食機構に関する基礎的な現地調査を実施し、荒天時の海浜の侵食には砂浜に遡上した海水が前浜に浸透して、地下水位が上昇することと密接に関連しているという新しい知見を得た。新しい工法は、このような侵食機構を逆に利用し、砂浜の高いレベルへの波の遡上は許容するが、地下水位の上昇や前浜からの浸出は防止するというものである。その方法とは、砂浜の中に埋設した透水層によって、浜に遡上し浸透した海水を砂浜内の地下水位と沖側の水位との差により沖の海底に自然排水させることで浜に下向きの流れをつくるものである。この流れにより砂は下方に押さえられて浜が侵食を受けにくくなり、さらに海水に含まれる浮遊砂が取り残されること(堆積)を可能とした。この工法の開発によって、防災機能を有することはもちろんのこと、砂浜の中に透水層を設置するだけなので、構造物は海面上にも海中にも必要なく、自然の砂浜と同様に極めて親水性機能の高い海岸保全が可能になった。さらに海浜への海水の浸透を増大させることで、浄化効果がより顕著になることも期待できる。
3.技術の効果
本工法の効果は、
- 自然海浜に比べ侵食が緩やかに、かつ軽減され、砂浜の回復力も増大すること
- 波高を60%程度に減衰する波浪制御構造物と等価な機能を有すること
- 閉鎖された海岸ではなく、容易にアクセスでき景観がよい潤いのある海岸整備が可能であること
- 海水の浄化効果が期待できること
- 従来工法より建設コストを低減できること
4.技術の適用範囲等
本工法の適用範囲は、
- 自然海岸の侵食対策
- 人工海浜の養浜安定化
- 高潮対策等の面的防護
- 護岸等の洗掘防止対策
5.技術の適用実績
津松坂港香良洲地区護岸(改良)築造工事(1998年9月〜1998年10月) 他3件