JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第5回国土技術開発賞

入賞(選考委員会委員長表彰)

カプセル空気輸送による立坑ズリ出しシステム (第5回国土技術開発賞 入賞)

応募技術名称カプセル空気輸送による立坑ズリ出しシステム
応募者名鹿島建設(株)
技術開発者鹿島建設(株)   松井信行
          片山泰雄
          松島達男
住友金属工業(株) 小杉佐内
          福永剛
関西設計(株)   斉藤和夫
          吉良浩司
          原田眞樹
共同開発者住友金属工業(株)
関西設計(株)

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

 近年地下構造物の大深度化が進んでいるが、地下工事に伴うズリ出し作業に従来の排土バケットを揚重する方式を適用した場合、土砂の飛散・ロープの切断事故等に対し抜本的な対策が困難であるという安全性の課題と、大深度になると吊りロープの自重が輸送効率を著しく低下させる問題がある。

2.技術の内容

 立坑下まで運ばれた掘削ズリを、ホッパで受け取り後計量してカプセルに積載し、地上までの間を輸送経路に敷設した管路内に発生させた気流によりカプセルを鉛直輸送する空気輸送システムを開発し、広島県沼隈幹線トンネル工事において適用した。

3.技術の効果

  • 大深度鉛直輸送システムの開発
    気流を駆動源とし1,000m級大深度立坑においても適用可能な物流システムを確立できた。
  • 高性能輸送システムの開発
    排土バケット揚重方式と比較し約1/3のサイクルタイムでの高速輸送を実現した。
  • コスト縮減
    コンパクトな地上設備であるためイニシャルコストの低減、省エネルギーな運転方式、自動化による省人化、メンテナンスの容易さ等によるランニングコストの低減により、100m〜150m以上の鉛直輸送において、ライフサイクルコストは従来の方式と同等となる。また深度が大きくなるに従いコスト的なメリットが大きい。
  • 安全性
    管路内を輸送することからズリ等輸送物の落下・飛散がなく、空気輸送であることから本質防爆であり、人的ミスへの対応システムおよび運転中の停電事故に伴うカプセル落下現象に対するカプセル安全回収システムを開発し大深度鉛直輸送に適したシステムを開発した。

4.技術の適用範囲等

 ズリ出しシステムに適用した場合、地上必要面積・安全対策施設等を考慮に入れると100mより浅い深度の立坑においてもライフサイクルコストで充分適用可能と考えられ、さらに安全性・保守性を高く評価した場合30m程度の深度においても優位性がある。輸送経路のメンテナンスを必要としないことから、信頼性が問題となる輸送物に対しては深度にかかわらず適用される。

5.技術の適用実績

 沼隈立坑工事、平成13年10月〜平成15年6月