JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第5回国土技術開発賞

入賞(選考委員会委員長表彰)

HIDAX(ハイダックス:High DAmping system in the neXt generation)

応募技術名称HiDAX(ハイダックス:High DAmping system in the neXt gener
副題マイコン制御によるセミアクティブ型制震ダンパ
応募者名鹿島建設(株)
技術開発者鹿島建設(株) 山田俊一
        栗野治彦
        田上淳
共同開発者日立機材(株)
カヤバ工業(株)

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

 制震構造は1990年代に入ってから急速に普及し、これまでに様々なタイプの制震装置が実用化された。しかしながら、個々の制震装置の能力や適用範囲にはそれぞれ限界がある。また、比較的オールラウンドな効果を期待できる既往のパッシブ型オイルダンパについても、スレンダーな超高層ビルでは、必ずしも十分な減衰効果が得られない場合がある。そこで、既往技術の中でも適用範囲の広いパッシブ型オイルダンパをベースにしながら、最新のセミアクティブ制御技術を取り入れることで、パッシブ型の限界性能を超える制震性能を合理的なコストで実現することを目指して、21世紀にふさわしく、コストパフォーマンスに優れ、かつ汎用性の高い新しい制震装置の開発に着手した。

2.技術の内容

 本制震装置は、オイルダンパの左右の油圧室を連結する流路に開閉制御弁(電磁弁)を設け、これを開閉することで、従来のパッシブ型オイルダンパの最大約2倍の振動エネルギー吸収能力を発揮することができる。装置本体は通常V字型のブレース等を介して建物の層間に設置され、各装置には原則としてコントローラがそれぞれ付属する。コントローラは、装置本体に内蔵された圧力センサとストロークセンサの情報のみを用いて制御を行うため、設置箇所ごとに制御系が完全に独立する“自律分散型”の制御システムとなっている。これにより、パッシブ型と同等の扱いやすさを実現しているばかりでなく、故障リスクの分散・低減も図られる。また、1台あたりの消費電力が僅かなため、無停電電源装置によるバックアップも容易であるし、万が一の断電時やセンサ異常時にはパッシブ型ダンパに自動的に切り替わるフェールセーフ機能を内蔵するなど、多重の安全対策が施されている。

3.技術の効果

 コストパフォーマンスが高いHiDAXは、大地震時の安全性を確保することはもちろんであるが、不確定な大地震への備えだけでなく、日常の風揺れや中小地震の揺れに対する居住性の向上にも役立ち、また、設置個所も少なくて済む。このようにHiDAXによって耐震安全レベルの高い良質な生活空間を合理的コストで確保することが可能となり、都市における地震防災性の飛躍的向上が図られるものと期待される。

4.技術の適用範囲等

基本的にはあらゆる建物に適用可能
風揺れ低減と高い地震時安全性の両立が求められる高層建物や超高層建物に特に効果的

5.技術の適用実績

中部電力(株)岐阜ビル新築工事、平成11年4月〜平成13年3月  他8件