JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第17回国土技術開発賞

優秀賞(国土交通大臣表彰)

丸太打設による液状化対策と地球温暖化緩和策(第17回国土技術開発賞 優秀賞)

応募技術名称丸太打設による液状化対策と地球温暖化緩和策
副題丸太打設液状化対策&カーボンストック工法(LP-LiC 工法)
応募者名飛島建設(株)
技術開発者飛島建設(株) 沼田淳紀・筒井雅行
共同開発者兼松日産農林(株)/昭和マテリアル(株)

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

主な技術開発の背景及び契機は以下の3点である。
・地球温暖化は極めて深刻で、この緩和策が必要であること。
・我が国は巨大地震が想定され、被害が広範で遠方でも甚大となる液状化の対策を進める必要があること。
・ 我が国の森林資源は現在極めて豊富で使用する必要があり、木材を大量需要する利用技術が望まれていること。

 IPCC の第5次評価報告書(2013)が示すように、地球温暖化は深刻さを増し、温室効果ガスの削減が喫緊の課題である。また、逼迫する首都圏直下地震、南海トラフの地震などに対して国土強靭化策を進めることも喫緊の課題である。特に地盤の液状化は、広範囲で発生し、一度液状化が生じると遠方においても被害は甚大となるため、この対策は環境負荷が少なく低コストで持続可能な方法が必要である。一方、日本の森林資源は極めて豊富で使用すべき時代となっており、新たな木材需要の創出が必要があり、政策的にも土木分野における木材の幅広い利用拡大が期待されている。

2.技術の内容

 応募する技術は、丸太を地盤中に圧入することで、地盤の密度を増大させ液状化抵抗を増強する工法である(図−1、図−2)。伐材した丸太を極力加工せず生材のまま用い、小型の重機(写真−1)による低振動・低騒音(図−3)、かつ施工範囲近傍での変位の影響がほとんどない(図−4)施工法を確立し、近接施工が必要な市街地、狭隘地、戸建住宅などでの施工を可能とした。丸太は、地下水位以下では腐らないので(図−5)、液状化対策を行うことで、成長中に木に蓄えられた炭素を地中に半永久的に貯蔵でき、工事の実施自体が地球温暖化緩和策となるといった他工法には見られない特徴を有する(図−6)。丸太頭部は、基本的には、地下水位以下に設置するが、地下水変動などへ対応するために部分的に腐朽対策を施し、長期耐久性を確実にした。以上のように、丸太を用いるという古い技術を基に、最近の技術を取り入れ、新しい信頼性の高い現代版の設計・施工法を確立した。このような方法により、地中に新たに森をつくり炭素貯蔵することで、丸太による液状化対策と地球温暖化緩和策を同時に可能にする世界初の工法を実現した。

3.技術の効果

【液状化対策効果】 信頼性の高い密度増大を原理とし、確実な液状化対策の実施が可能
【炭素貯蔵効果】 工事を行えば行うほど炭素貯蔵ができる
【周辺環境に対する 効果】 低振動・低騒音かつ施工範囲外での変位の影響がほとんどなく狭隘地での施工が可能
【間接的効果】国産木材の 未利用材を積極的に利用でき、林業再生に寄与するだけでなく、水源涵養や山林域の土砂災害防止にも貢献し、液状化の発生する沿岸部の防災と同時に山間部の防災も実現が可能

4.技術の適用範囲

・対象構造物: 建物および周辺地盤、戸建住宅、駐車場、公園、グラウンド、宅地・道路・鉄道・海岸保全・河川などの盛土構造物の液状化対策
・適用地盤: 原地盤のN 値;N 値≦ 20、対象土質;砂質土、細粒分含有率FC ≦ 50%、改良深度;GL-12m以浅
・丸太使用樹種:スギ、ヒノキ、カラマツなど基本的には樹種問わず
・丸太の条件: 丸太末口呼び径;0.13m 以上0.18m 未満、丸太長さ;6m 以下、丸太継ぎ数;2点以下(丸太3本以下)

5.技術の適用実績

 美浜東寿会館液状化対策工事(2013 年9月〜 2013 年11 月)、他10 件

写真・図・表