JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第17回国土技術開発賞

最優秀賞(国土交通大臣表彰)

高耐久海水練りコンクリート (第17回国土技術開発賞 最優秀賞)

応募技術名称高耐久海水練りコンクリート
副題産業副産物、特殊混和剤を使用した海水練りコンクリート
応募者名(株)大林組
技術開発者(株)大林組  新村 亮・竹田宣典
共同開発者国立研究開発法人港湾空港技術研究所
東京工業大学大学院教授 大即信明
東北大学大学院教授 久田 真
JFE スチール(株)

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

 防波堤、護岸、消波ブロック、舗装などの港湾、海岸、工場、発電所施設等に使われるコンクリートは波浪や流水、輪荷重等による摩耗や衝撃による劣化作用を受けるため、緻密で強度の高いコンクリートが求められる。一方で離島、海上、沿岸部などでの工事、災害復旧の緊急工事などではコンクリート練混ぜ用の真水の入手が困難な場合がある。

しかし、従来の海水練りコンクリートは、早期強度は高いが、長期強度の伸びが少ないという問題があった。また、フレッシュコンクリートの流動性の保持時間が短く、施工性に課題があった。一方、海水を使用するため、鉄筋コンクリート構造物への適用においては、鉄筋の防食性の課題があった。上記の課題を解決するため、耐久性の高い海水練りコンクリート技術の開発を行った。

2.技術の内容

 本技術は豊富な天然資源である海水を有効利用するとともに、産業副産物である高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカフュームなどを混和材として使用し、さらに、海水練りコンクリート用特殊混和剤を組み合わせて用いたコンクリートである。また、コンクリートがらや鉄鋼スラグ等の産業副産物を骨材として使用することもできる。 ただし、鉄筋コンクリート構造物には防食鉄筋などの非腐食性の補強材を使用する。

3.技術の効果

 本技術は、以下のような効果がある。

インフラの長寿命化

 海水を使用するとともに、高炉スラグ、フライアッシュ等の混和材、海水用特殊混和剤を併用することで、図−1に示す通り長期強度が増加する。また、緻密性が向上することで、図−2に示す通り水密性が向上するとともに、波浪や流水、輪荷重等による摩耗や衝撃に対する耐久性を向上することができる。非腐食性補強材を使用することにより、写真−1に示す通り長期耐久性を確保できる。

施工性

 真水練りコンクリートと比べて、施工性は同等である。

工期短縮

 初期強度の発現が速いため、型枠存置期間やコンクリートの養生期間を短縮でき、コンクリート工事の工期を短縮することができる。

コストの縮減

 真水の入手が困難な場合には、コンクリート工事のコスト縮減が可能である。

環境負荷の低減

 コンクリート工事での二酸化炭素排出量を削減できる。

廃棄物の削減

 写真−2〜4に示す通りコンクリートがらや鉄鋼スラグ等の産業副産物を有効利用できる。

4.技術の適用範囲

・防波堤、護岸、港湾用ブロック、舗装など港湾、海岸、工場、発電所等の無筋コンクリート構造物
・ 鉄筋コンクリート構造での非腐食性の補強材の使用にあたっては、状況に応じた性能確認を行った上で適用範囲を拡大

5.技術の適用実績

 相馬港本港地区防波堤(沖)(災害復旧)消波外工事、平成24 年10 月〜平成25 年10 月 他1件

写真・図・表