JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第6回国土技術開発賞

入賞(選考委員会委員長表彰)

HiPer CF工法 (第6回国土技術開発賞 入賞)

応募技術名称HiPer CF工法
副題緩衝材を用いた炭素繊維シート接着による補強工法
応募者名清水建設(株)
新日本石油(株)
技術開発者清水建設(株)     前田敏也
新日本石油(株)    小牧秀之
(株)東邦アーステック 藤間章彦
共同開発者(株)東邦アーステック

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

 橋梁やトンネル等のコンクリート構造物に対する一般的な補強方法として、高強度、高耐久、施工性に優れた炭素繊維シート接着工法が広く用いられている。しかし、炭素繊維シート接着工法では局部的な応力集中やシートのはく離が生じるため、補強効果を発揮するために必要となるシート量が多くなり、鋼板接着工法に比べて経済性に劣る点が指摘されている。このような問題を解決し、少ないシート量でも炭素繊維シートの高い性能を発揮させるため、これまでに無かった、柔軟で変形性能に優れた緩衝材をコンクリートと炭素繊維シートとの間に塗布してシートの応力集中およびはく離を抑制できるHiPer CF工法を開発した。

2.技術の内容

 本工法は、炭素繊維シートを接着して構造物を補強する工法において、コンクリート表面と炭素繊維シートとの間に緩衝材と称する弾性系の材料を約0.5mmの厚さで塗布する工法である(図−1)。柔軟で変形性能に優れた緩衝材が、炭素繊維シートに発生する引張力を分散させて局部的な応力集中を防ぐとともに、従来工法の課題であった炭素繊維シートのはく離に対する抵抗性を向上させる。このような効果により、従来工法よりも少ないシート量で同等の補強効果が得られ、コストが削減できる。

3.技術の効果

 梁の曲げ補強試験、管の内面補強試験、平板の押抜き試験、実橋梁における載荷試験結果から、従来工法と同じシート量で補強した部材の耐力や、コンクリートの剥落に対するシートのはく離耐力等の補強効果が向上することを確認した(図−2)。また、床版の疲労補強においては、従来工法の2/3のシート量で同等の効果が得られることを疲労試験により確認した(図−3)。さらに、橋梁やトンネル等の実構造物における施工実績から、現場において容易に施工できることも確認している(写真−1)。従来工法に比べて補強効果が向上するため、少ないシート量で従来と同等の効果が得られ、道路橋床版の補強では約30%のコスト削減が可能である(図−4)。

4.技術の適用範囲等

 HiPer CF工法は様々なコンクリート構造物の補修・補強に適用が可能である。

・ 桁、床版、橋脚、梁、柱等の曲げ補強、およびトンネルや管の内面補強に適用できる。
・ コンクリートのはく落やひび割れの防止に適用できる。
・ 構造物の形状が複雑な場合や、狭隘箇所、高所での施工に適用できる。
水中や漏水の多い箇所、5℃以下の低温環境下での施工は困難である。

5.技術の適用実績

 中央自動車道仙川高架橋床版補修工事、平成15年8月〜平成16年3月他10件