JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第7回国土技術開発賞

入賞(選考委員会委員長表彰)

新濾過処理システム (第7回国土技術開発賞 入賞)

応募技術名称新濾過処理システム
副題特殊膜濾過ユニットによる高度な膜式濁水処理システム
応募者名清水建設(株)
(株)睦商事
技術開発者清水建設(株) 宮沢和夫
        岡村和夫
(株)睦商事  不破 隆
        濱田智子

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

 自然環境を守る上で、建設工事において発生する濁水(濁りのもとの浮遊物質SS)を適切に処理して排水することは、大変重要なことである。従来の濁水処理方法では微細な浮遊物質の除去が難しく、凝集沈殿処理方法では浮遊物質濃度SSを下げるのに限界があった。また、これ以上の清澄処理をおこなうには砂濾過処理方法があるが、濁水の濃度によっては前処理が必要であった。最近の厳しい環境保全の傾向から、建設工事で発生する高濃度濁水に対応ができ、より清澄度の高い濾過水が得られるコンパクトな濁水処理システムが望まれていた。

2.技術の内容

 今回開発した「新濾過処理システム」は、特殊な芯材を濾布で包み込んだ板状の膜濾過ユニットを、複数濾過槽内に垂直に懸垂し、ユニットの内外に水頭差をつけ、濾布の表面で浮遊物質を捕捉する膜式濁水処理方法である。濾過された処理水は、芯材の毛細管現象などにより上部から外部に取り出している。膜濾過のため、有機性高分子凝集剤を必要とせず、また垂直濾布面の通過速度を遅くすることで、捕捉した濁質を膜の表面に強固に付着させず、付着濁質自身でも濾過効果を促進するようにしている。それにより、従来の凝集沈殿処理と砂濾過処理を組合せた処理方法に代わり、単独で、高濃度濁水(SS1,000〜3,000mg/L)をSS10mg/L以下まで直接清澄濾過ができる。(図−1,2)

図−1 システムのフロー

 図−2 膜濾過の原理

3.技術の効果

 室内や現場での予備実験で実現性を確認後、H10からH13にかけて現場実大実証(処理能力16m3/h)や中規模の濾布選定試験(処理能力0.5m3/h)をおこないシステムを確立、H16よりシールド現場で本システムを採用(処理能力15m3/h)し、現在稼動中である。予備実験・実証試験や現場実稼動を通し、高濃度濁水(SS1,000〜3,000mg/L)をSS10mg/L以下まで清澄濾過しており、十分に環境保全に応えた濾過性能を発揮している。

 また、本システムの採用に伴い、イニシャルコスト、ランニングコストの低減と施工性(稼動効率)の向上が図られている。(写真−1)

写真−1 原水(左)と濾過水

4.技術の適用範囲等

濁水のSS 3,000mg/L以下に適用できる。(SS3,000mg/L以上については未確認。)
(トンネル、ダム、造成などの工事で発生する濁水処理)
濁水は一旦原水槽に貯水して前処理をおこない、膜表面に粘着するような粘性物質は事前に除去する。
濾過処理の効率を上げるため、無機質系の凝集剤を使用して原水をフロック化させる。

5.技術の適用実績

新矢作川用水農業水利事業北野幹線水路上流部北野Bサイホン建設工事、平成16年10月〜平成18年6月(予定) 他2件

 

    写真−2 新濾過処理システム濾過槽(北野幹線)         写真−3 濾過槽内部(北野幹線)

    写真−4 逆洗浄(バブリング)状況